NO63 グレタさん

2019年10月1日

NO 63 グレタさん

Greta Thunberg au parlement européen (33744056508), recadré.png

 この9月23日、アメリカ・ニューヨークで開かれた国連の気候行動サミット(90か国参加)でスウェーデンの環境活動家グレタ・トウーンベリさん16歳が地球温暖化を食い止め警鐘を鳴らす目的でスピーチをしました(国連からの招待)「科学者の声を聞き科学に基づいて団結して行動して欲しい」「人々は苦しみ、死にかけ生態系は崩壊しようとしています。わたしたちは今、大絶滅の始まりにいます」「あなたたちは裏切っています。わたしたちは許しません」「10年で二酸化炭素排出量を半減したとしても、気温上昇を1,5℃に抑える確率は50%しかない」「それなのにあなたたちが話すのはお金や永続的な経済成長というおとぎ話だけ」「世界の首脳は環境問題に取り組んでいません」(要旨:NHK NEWS WEB 9月28日)「How dare you(よくも そんなこと言えるわね!)」と涙ながらに叫んだそうです。ただ二酸化炭素による地球温暖化説は仮説の域を出ていないとの反論もあります。しかし今や中国、アメリカが最大の二酸化炭素排出国で、多くの国が石油、天然ガス、石炭など化石燃料をエネルギー源として大量に使用してきました。太陽光や風力、地熱など自然エネルギーの活用、拡大に力を注ぎ便利の追求を見直す必要があります。

産業革命以降の化石燃料の大量消費が温暖化をもたらしたのはほぼ確実でしょう。人間が生み出した気候の変化は人の手でブレーキをかけなくては止まりません。温暖化の進行を止めることが最優先です。

またグレタ・トゥーンベリさんは「ライト・ライブリフッド賞」を受賞しました。人権問題や環境保護などに貢献した人に贈られるスウェーデンのライト・ライブリフッド賞の運営財団は9月25日、環境活動家の高校生・グレタさんを受賞者の一人に選んだと発表しました。「科学的事実をもとに緊迫した気候変動への対策を求める人々の声を高めたことが理由」としています。この賞は「もう一つのノーベル平和賞」と呼ばれています。

最近の世界を巡る地球温暖化の現象は豪雨、洪水、海面上昇、旱魃などから地球温暖化をはじめ酸性雨、オゾン層破壊など地球環境は目に見えて悪化しています。グレタさんの警鐘に耳を傾け行動を起こさなければいけないでしょう。

NO 62 働く喜び

2019年9月21日

 この9月20日、大阪府経営合理化協会主催の経営幹部塾で「中期経営計画講座」を担当、16名の参加者の方々を対象に2時間の講義を行いました。過去40年以上勉強してきたものを資料としてまとめレジュメとして配布、途中SWOT分析のグループワークと発表を取り入れて進めました。参加者は様々な業種、業界の中堅企業の管理職や執行役員、取締役の方々で非常に熱心、終始真剣な面持ちで受講してくださいました。

約2年間の塾で毎月1回開催、研修や工場見学など修了後は講師ともども懇親会が開催されることもあるようです。今回催して下さった懇親会でも終始和やかに、さまざまな質問や皆さんの仕事の近況や悩みなどを意見交換しました。

帰路、今回の講座のこと、参加者の反響や懇談したことなど、今までにない喜びを感じ、働く喜びみたいなものがふつふつとこみ上げてきました。やって良かったと・・・ 単にいい話を聞いた時とは違う感動です。

働く喜びは単に時間の長さだけではなく、相手に喜びや感動を伝え、一緒になって学び1つのことをやり遂げる、達成する中に生まれるものだと思いました。そして次に向かって新たな挑戦意欲が湧いてくる。そういう循環が人生や仕事に張りをもたらしてくれるのでしょう。相手に何かを求めるよりも、まずは感謝の気持ちをもって行動を起こし、先に相手に感動や喜びを伝える努力をしていきたいと思います。  

NO61 環境破壊

2019年7月17日

プラスティック海洋ごみ写真 に対する画像結果

 6月末に開催されたG20大阪サミットにおいて海洋プラスチックごみを2050年までにゼロにすることを目指し「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が採択されました。大きな第一歩だと思います。これを具体化するために日本政府は次の取り組みを発表しています

 1 ODA=政府開発援助などによって、途上国でのリサイクル施設の建設や環境法制の

   整備支援や世界全体でごみ処理の専門家を2025年までに1万人育成する

 2 海洋プラスチックごみの排出量が多いASEAN地域のごみ処理能力の向上に協力する

 3 国内ではプラスチックの代替品の製造やリサイクル技術などの国際展開を推進する

日本では深刻な被害をもたらした公害病を経験しており、1970年代初頭にさまざまな対策や規制がなされました。その結果、目に見えた形の環境汚染は改善されています。しかし今や世界中に一億個を超える化学物質が存在し(アメリカ化学会のデーターベースに登録)化学物質をめぐる問題が新たなステージに突入しているのです。

今から10年前にアメリカのゴア元副大統領が「不都合な真実」という本が出版されました。より便利で快適な社会を追い求めた結果、温室効果ガスである二酸化炭素の放出量が増大し地球規模の気候変動が引き起こされつつある現状に警告がなされました。

丁度この機会にと思い日本環境化学会編著「地球をめぐる不都合な物質」(講談社ブルーバックス、2019年6月発刊)を購入し読んでみて衝撃を受けました。今、「地球をめぐる不都合な物質」とはPOPS(残留性有機汚染物質)、マイクロプラスチック、PM2,5、水銀などです。

 ・ダイオキシンなどの環境ホルモンやマイクロプラスチック、PM2,5、メチル水銀などに

        よる汚染は全世界に広がりつつあり生態系に回復不能なダメージを与えつつあります

 ・西部太平洋のスジイルカが蓄積するPCB濃度はなんと海水中1000万倍 こうした状況が続けばいづれマグロやイワシも

  安心して食べれなくなります

 ・全世界の海には50兆個以上ものマイクロプラスチックが漂っています

また今のままの状態を放置すると2050年には海洋の魚類総トン数と同量のマイクロプラスティックが海に漂うことになるそうです。人類が生き残っていく

ためには不都合な物質の削減が必要で、企業団体、個人においても今からすぐにでもできることから少しでも取り組むことが大事だと思います。                  

NO60 40代からの仕事術

2019年6月12日

 この6月6日(木)クローズアップ現代で「脱おっさんの仕事塾」という番組がありました。またこの番組のもとになった本を購入して(「会社人生を後悔しない40代からの仕事術」石山恒貴+パーソナル研究所)通読してみました。キーになるところだけ紹介します。

ミドル・シニア期の会社員のジョブ・パフォーマンスに影響を与えている要因を分析した結果「自走力」が高い人には次の5つの行動特性が見られたそう

です。

 1 まずやってみる   <Proactive>

 2 仕事を意味づける  <Explore>

 3 年下とうまくやる  <Diversity>

 4 居場所をつくる   <Associate>

 5 学びを活かす    <Learn>

40歳を越えたビジネスパーソンが、ある種の「壁」を感じる時、その人はこれらの行動のうち、いずれかでつまずいている可能性があるというのです

逆に「ミドル・シニアの優鬱(ゆうつ)」に陥ることなく、イキイキと働き続け「自走力」を発揮している人はこの5つの行動を実践できているのではな

いかと考えられます。

中でも①「まずやってみる」③「年下とうまくやる」⑤「学びを活かす」の3つが大事だと思います。そうすると著者の石山さんおっしゃるように5つの

行動が「具体的経験を積む」→「事態を観察して振り返る」→「ノウハウに落とし込む」→「現場で実験する」という学びのサイクルが廻り、職場で好循

環を生みミドル・シニアの満足感が得られるのではないでしょうか

NO59 営業学

2019年4月2日

最近、ビジネス・ブレークスルー大学学長大前研一氏編「営業学」という著書を読みました(2011年発行)「営業プロフェッショナルのための本」というコンセプトで今までの営業本とは一味違う内容です。40年程前マーケティングや経営について学び始めた頃に大前研一氏の「マッキンゼー現代の経営戦略」その後の「企業参謀」を読んで、理論の先進性やフレームワークの多さに特別の驚きを覚えたものです。

「営業学」のポイントは次のとおりです。

 ・営業は「プロフェショナル」を目指せ。そしてプロフェッショナルとアマチュアを分けるものは「顧客主義」であ

  り、これは高い専門性や倫理観などの要件にもまして重要であると、その意味で、ほとんど の日本企業の営業は、

  まだまだアマチュアの域を脱していません。営業は「業者」から「パートナー」に進化せよ! 

 ・顧客主義に徹することは、顧客のビジネスに価値を提供することであり、それは、顧客が抱えている問題のみなら

        ず、顧客が気づいていない問題を解決することで実現する。それには、「こんなサービスがほしい」「あんな機能

        はいらない」といった顧客ニーズをはじめ、顧客の内部情報、顧客の顧客(多くはエンドユーザー)に関する情

        報,ライバルや市場の動向などを把握しなければなりません。

 ・製品の販売ではなく、サービスと組み合わせたソリューション営業が主流です

 ・SFA(セールス・フォース・オートメーション:IT活用システム)の真価は営業プロセスの改善と知識の共有にあ

        り、営業効率向上に有用です

 ・営業プロフェショナルにおいて身につけるべき基本スキル

    ・マーケティングリテラシー(マーケティングに関する体系的な知識)

    ・ロジカル・コミュニケーション(論理的に考え、伝達する力)

 ・「あなたの顧客は営業に何を求めているか」について、あるコンサルティング会社が聞き取ったところ第1位は

  「社交性とコミュニケーション」で「専門知識と問題解決力」「顧客企業が属する業界に関する知識」でした

 ・営業プロフェショナル化はまさしくフロンティアであり時間とエネルギーを傾けるに値する挑戦です

この他、問題解決営業、営業のマーケティング・マインド、営業のセルフ・マネジメント力、営業チーム力の向上

などのテーマで営業学が展開されており一読の価値があります。

NO58 会社とは何か

2019年2月21日

 日経ビジネス2019年1月7日号で「会社とは何かー組織と働き方の未来」という特集を組んでいましたので、それを参考に考えてみたいと思います。

会社の目的については一般的に『会社とは「事業」を行い利益を追求する法人』です。世界的経営学者のピーターF・ドラッカーは「企業の目的は

「顧客の創造」である」と定義しています。そしてドラッカーは「企業は社会全体の生命体」としてとらえ、社会を構成する組織や個人が、その社会

に貢献しているから社会が成り立つとしています。さらにドラッカーはすべての組織には3つの役割があると言います。

 1 「貢献」と「成果」そして「人間の幸せ」

 2 マネジメント層の3つの役割

                   1  自らの組織の特有の役割を果たす

                  2  仕事を生産的なものにし働く人たちに成果を上げさせる

                  3   自らが社会に与えるインパクトを処理するとともに社会的貢献を行う

 3 知りながら害をなすな

鋭い洞察と定義です。

日経ビジネスの特集号では、まずROE(株主資本利益率:収益性の指標)重視の経営だけではダメだと。非財務指標:社員や取引先、株主、顧客、

地域などバランス良く利益を配分しなければならない時代に入っていると。「会社は何のためにあるのか?」「信頼される仕事をしなければ組織

はもたない。そんな時代が来ている」と指摘しています。

ロート製薬では2016年に大手企業でいち早く副業の解禁、さらにはダブルジョブ制度を取り入れています。理由は社員に多様な経験をさせる、

社員の能力を最大限に発揮させること。一方で社内運動会や社員旅行を定期的に行って社員の団結を生み出しています。

ポストイットで有名な世界的企業3Mは世界200カ国に進出、9万人の社員が「世界中の深刻な社会問題を解決し、生活を改善していく」という

コンセプトをもとに仕事をしています。世界の名だたる企業が参考にする「15%ルール」「ブートレッギング(密造酒造り)」という研究方針が

あります。業務時間の15%を自由な研究や活動に使っていい、それも密造酒を造るように、こっそり隠れて。「顧客や社員、地域のことを考えて、

彼らを満足させなければ、株主にいい事なんて起きないだろう」と 3Mは60年増配を続けています。

東京大学の柳川範之教授は、次世代の「会社」の意味を「人と人がインタラクション(相互作用)する場所」と定義しています。組織形態は

クラシック型とロック型に分化するというのです。クラシック型は1つの古典的楽曲の演奏を極めていく。従来の日本の会社です。それに対しロック型

は時代に合わせ新曲を作り続けなければならない。デジタル化など変化の時代に先進国の多くの産業はロック型でなければ生き残っていけない」と。

いづれにしてもフラットでオープンな組織、社員の自主性や創造性、働きがい、やりがいを育む機動的な組織が伸びていくと思います。

NO57 リーダーシップ

2019年1月16日

 リーダーシップ論は古くて新しいテーマです。今回はこのテーマを取り上げます。リーダーシップは一般的には「上司やリーダーが明確なビジョンと目標を示しフォロワーのパフォーマンスを最大化させることによって目標達成を実現する能力」と言われています。

フォロワーシップとはリーダーとの信頼関係をより強固なものとし貢献力と批判力をもってリーダーを補佐する能力とも言えます

ピーター・F・ドラッカーは

  ・リーダーシップは資質ではなく「仕事」である

  ・リーダーシップを地位や特権ではなく「責任」と見るべきである

  ・リーダーに関する唯一の条件はつき従う者がいることである「信頼」が必要である

と言っています。

またリーダーに求められる役割は次の4つです

  ・進むべき方向性を明確に示し、目標を設定する

  ・組織環境を整える(人員配置、役割分担、情報共有システム、コミュニケーション方法、意思決定方法など)また他のメンバーが目的を達成

   するために自ら動くように、環境や雰囲気を作り出すスキルとも言えます

  ・エンパワーメントを推し進める(権限移譲することで個々人の潜在能力を引き出し目標達成に向かわしめる)

  ・自らが模範となる

リーダーシップには有名なPM理論というのがあります。この理論(社会心理学者三隅二不二氏1966年提唱)は縦軸にパフォーマンス(課題達成機能)横軸にメンテナンス(集団維持機能)を置いて4象限の中で右上の象限のパフォーマンスとメンテナンス共に高いところを理想としています。やはりビジョンや目標、戦略、戦術、推進力に優れているだけではなく部下のケアも万全で部下の主体性、チームの協働を引き出すことも出来ている状態が好ましいのです。最後に最近の経営学の世界で重要視されているリーダーシップの考え方がありますので紹介したいと思います。(日本経済新聞2018、12,27日夕刊 私のリーダー論:早稲田大学入山章栄准教授)1つはトランザクショナル・リーダーシップで質の高い管理型のリーダーのことで部下のことをきちんと把握し、的確に信賞必罰を行う。部下はそれに応えて上司のために一生懸命に働くという取引関係を前提にしたもの。もう1つがトランスフォーメーショナル・リーダーシップというもので一言でいうと啓発型です。ビジョンや長期の方向性を示し部下の好奇心を刺激してワクワクさせて一緒に巻き込んでいくリーダーです。変化の激しい時代に重要なのは後者で納得性だというのです。

NO56 M&Aを考える

2018年12月4日

 M&Aはなかなか難しい経営課題です。特に業種を超えてM&Aを行う場合は難易度が一段と上がります。世間で多くの成功失敗の事例もあり、今回は日経ビジネス2018年11,05日号で「失敗するM&A、成功するM&A」という特集を参考にM&Aを考えてみます。

日本企業のM&A成功率についてはデトロイトトーマツコンサルティングが2018年5月に発表した調査結果によると海外M&Aで37%、失敗が21%、どちらとも言えないが42%になっています。国内でも同様にこの成功率が1つの目安になると思います。

一般的にM&Aを成功に導くには「事前準備」「条件交渉」「買収後の統合作業」の3つの関門があります。

事前準備はM&Aの交渉前の準備のことで、M&A対象企業のデューデリジェンス;資産査定と既存事業とのシナジー効果、自社の成長戦略と合致しているかなどの検討を行います。買収巧者として名高い日本電産の永守重信会長はこれまで60件のM&Aを手掛け、その多くで結果を出されていますが、毎年、年末になると買収を考えている企業のトップに「会社を売るときには声をかけてほしい」と手紙を書かれているそうです。手紙をもらった企業経営者が「売り時」と感じた時には、真っ先に日本電産の永守会長を思い浮かべるそうです。買収案件の交渉には「相対」と「入札」があり、入札はライバルとの競り合いになるため価格がつり上がりやすいわけです。その意味では「相対」が好ましいわけです。

出合い頭は失敗の下、常日頃からアンテナを張って独占交渉が望ましいと思います。特に銀行、証券会社からの持ち込み案件には注意が必要です。

条件交渉で最大の焦点は「買収価格」になります。基本は「相手のことを正しく知らなければ正しい値段はつけられない」ことです。デューデリジェンス(DD)は財務諸表などを分析する財務DD、他には法律面、税務面など様々な角度から分析が必要です。DDを怠ると買収後「減損計上」につながる場合があり、特に気をつけないといけないのは、M&Aありきで、それを正当化する戦略を考え出し買収に走ってしまうことです。投資ファンドは撤退ラインが徹底していて、企業を買収した後改革を施し、5年程度のあと売却して利ザヤを得るのが投資ファンドです。余りに熱くなって高値で買うと将来売却しても利益が残らないことがあります。やはり「撤退ラインを事前に決めておく」ことが大切です。さらにM&Aが成功できるためには、「聞く耳を持つ経営者かどうか」「相手先との一体感があるかどうか」「トップ自らすべての交渉をせず交渉担当者に任せる」ことがポイントになります。

統合作業は買収後の統合作業(PMI)のことです。買収したことで「市場を買えた」「時間を買えた」と満足してはいけないのです。特に「日本企業は企業が持つ製品などを見て買収を判断しがちですが企業を経営するのは人。トップの素質は投資決定のかなりの要素を占める」という識者の声があります。統合作業では買収先企業の経営陣や従業員とどう一体感を持たせ、生かすのに工夫し、担当者がいかに圧倒的な統治者意識を持てるかがPMIの成否を決めると言われています。結局最後は相互の信頼感がM&A成功の秘訣だと思います。

NO55 意識改革

2018年10月22日

戦前、戦後に設立され、70~100年の長い歴史を持つ老舗企業が陥りやすいのが「業績低迷」と「重苦しい社内の空気、諦め感」ではないでしょうか。最近ある企業様のこうした状況を打破すべく社内改革に取り組まれた模様を知り、このテーマを取り上げました。

その企業様は年商60億円社員90名、戦後まもなく電気、ガス、水道の計測器の修理から業を起こし、その後電気工事業を経て計測機器や産業機器等総合エンジニヤリング商社として発展、しかし近年は業績がやや停滞、2年前新しい社長にバトンタッチされたものの優秀な社員の退職などもあり、何を言っても会社は変わらないという諦め感が漂うような重苦しい社内の空気だったようです。そんなこともあり新社長が取り組まれたのは次の3つでした。

 1 最新の会計システムの導入と販売管理システムとの連動で月次決算による経営数字や部門の業績の見える化を進め、経営判断がし易くなった。

 2 部門別、階層別研修会の実施と飲み会の実施です。また女子社員とも意見を聴く場を設け、様々な機会を通して社長みずから社員の意見要望を

   聴くことにしたそうです。また大勢の社員の場ではしゃべりにくいこともあるだろうと社内に「目安箱」を設置、そうすると「住宅手当」

   「分煙」「パワハラ」「給与体系」「評価制度」など様々な意見が寄せられたそうです。それらを社長の陣頭指揮のもと1つ1つ丹念に

   解消に取り組まれたそうです。特に「給与体系」「評価制度」については社内に不公平感、不透明感が漂っていたそうです。また女子社員の

   意見は貴重だったそうです。

 3 社員が共有できる経営理念の策定に取り組む

   やはり単なる「標語」のようなものではなく社内外から支持共感を頂ける内容の伴なった経営理念の策定に取り組まれています。社会に対し

   どういう事業をどういう精神、姿勢(心持で)でもって取り組むのか、また社員に対してどういう企業を目指すのかを明示出来ています。

   やはり企業理念は社会、顧客、取引先に対して、また社員に対して説得力のあるものでなければなりません。トップを中心によく議論され簡

   潔明瞭な言葉て作られています。

そうした取り組みの結果、社内の空気も変わり業績も回復、更なる改革に取り組まれているようです。最近静岡県にあるスルガ銀行の不適切融資と過度のノルマで世間を騒がせていますが、一番の問題は役員、トップ層が経営数字だけを見て経営を行っており現場を知らなすぎることだと思います。現場の暴走です。やはりトップが率先垂範で現場社員とのコミュニケーションを行い、声を聞き「変わろう、変えていこう」の旗を振り続けて社内を明るく伸び伸びと働ける風土にしていかなければ企業の発展はありません。久しぶりに気持ちのいい会社に出合いました。新社長の目のつけ方、手腕に拍手を送ります。

 

NO54 部下育成(2)

2018年9月11日

 先週、中堅企業の営業管理職を対象に「部下育成」をテーマに研修を行いました(参加者40数名)そこで部下と「同行営業」をどの程度行っているかを聞いてみたところ、意外に少ないことが分かりました。「同行営業」は顧客や市場の動向をつぶさに知る機会であると同時に部下の営業力を観察し実力の程を知る機会でもあります。さらに上司が商談や顧客対応のお手本を見せ、移動中、部下の悩みを聴いたり、アドバイスする絶好の機会でもあります。全体として上司自身も部下育成が十分できているとは思っていないのが実情でした。こうした状況は大半の日本企業の上司がプレイングマネージャ―で目標や担当を持って忙しい上に部下指導まで手が廻っていないことが明らかのようです。このことは産業能率大学が2017年に実施した「第4回上場企業の課長に関する実態調査」でも日本企業の99,2%がプレイングマネージャであることや2018年2月22日の日本経済新聞の「社内で起きている問題」という記事の中で「マネージャー層の不足、能力の不足」と「社員教育の優先順位が低い」というのが上位を占めていることでも部下育成が低調なのがうかがい知れるところでもあります。この問題は会社サイドが業績中心の経営から部下育成にも重点を置き業績向上と部下育成の両方にバランスのとれた経営にシフトすることが必要と思われます。

当日、研修後半のグループ討議で「部下をいかに育てるか!」を討議をしてもらった結果、様々な素晴らしい意見が続出、部下育成の決意が発表されるなど大いに盛り上がりました。その結果参加者の大半が部下育成への熱い思いを共有して終了することができました。よかったです。

具体的には①経営方針や研修を通じてマネージャー層の部下育成に対する意識変革を行い部下育成の環境を整備すること②上司のプレイングマネージャ―としての直接担当業務の負荷を2~3年かけて20~30%減らすこと③その分を部下育成などの業務に振り向けたり、部下に業務移管をするなど「仕事を任せる」ことが大事だと思います

部下育成を進める上で最も大事なことは①部下との信頼関係を構築すること、信頼関係があれば相互に受け入れる土壌が出来、モチベーションが上がるものです②部下には背伸びをしなければいけない仕事の機会を与え、目指すべき方向、姿を示し達成させてやることです③仕事の目標や課題をやり遂げられるように支援し助け合う職場の風土をつくることです④飲み会や面談の場をつくるなどコミュニケーションの場を増やし進捗にあわせて必要なフィードバックを行うことです。人は「存在を認められたり、励まされたり、ほめられるとやる気が出るものです」また部下の成長のステージや能力の伸長に応じて次のレベルの仕事を与えるのが好ましいでしょう(入社2~3年:小さな階段をつくり、自分で乗り越えた実感を積み重ねさせる、成長期:徐々に権限委譲し自己裁量の範囲を広げ仕事に自信を持たせる)いよいよ超高齢化社会、成熟社会が到来します。そんな中でも活力ある日本、活力ある職場をつくるためにも今こそ各企業が次を担う20~30代の若手の人材育成に取り組んでいきたいものです。