NO53 部下育成(1)

2018年7月24日

 目先の業績達成に追われ人材育成にまで手が回らないプレイングマネージャーが多くなっています。その分部下育成が後回しになっています。今回取り上げた書籍は、題名が「上司の9割は部下の成長に無関心」(著者:前川孝雄 PHPビジネス新書)、副題は「人が育つ現場を取り戻す処方箋」です。まず部下から見て「仕事を身につける上で役に立った上司からの育成指導」(出典:労政時報2012,4,27発行 管理職309名のアンケート)を見てみます。

 1位 リーダーシップをとる機会を与えられた         39,2%

 2位 多様な経験の積める仕事を与えられた       34,0%

 3位 なるべく自分で考えるような指導をしてくれた   26,9%

 4位 仕事に対する姿勢を指導された          25,6%

 5位 能力の伸長に応じて次の仕事を与えられた     19,4%

 6位 仕事を達成する喜びを教えてもらった       16,8%

 7位 職場でのコミュニケーションの時間をとってくれた 16,2%

結局人材育成といっても人は仕事の現場で成長するものであり、上司の役割が大きいと言えます。また「少し背伸びが必要な仕事」を与えることが人を一番育てるということです。人は自分の能力を超える仕事を任され、周りの協力を仰ぎながらそれを乗り越え、その経験を振り返り、習得した知恵を自覚するという経験を通して成長していくのです。そのため上司が仕事の現場で部下に挑戦の機会を与え、成功に向けて支援することなくして、部下の育成はできないということです。そのためには「指示型」から傾聴、対話を通じて「考えさせる」「やるべきことを引き出す」「任せる」方向に舵を切ることでしょう

成長期の昔は挑戦が当たり前で「意図せずとも人が育った時代」でした。しかし現在は、年功序列、終身雇用が崩れ、低成長、成熟、人口減が前提になった社会では「工夫しなければ人が育たない時代」になったとも言えます。部下育成には時間はかかるものです。一朝一夕に成果を感じることは出来ませんが人が育つ組織と育たない組織では5年後、10年後で大きな違いが出てきます。また人の育成の喜びを味わえば病みつきになるほど魅力的な仕事でもあります。まずプレイングマネージャーの仕事を少し減らし、部下に仕事を任せ部下の育成に時間が割けるマネージャーとしての仕事をする時間を確保してください。そして会社として大事なことは部下育成の研修を行うと共に、部下育成の意識を高めそれらの成果を発表し共有し合う場を設け人が育つ職場を全社に広げることでしょう。

NO52 マネージャーとして大切なこと(2)

2018年6月3日

・面談、レビューでは仕事のことから入らず、まずプライベートな質問をします。プライベートの趣味や子供の話をする。

 すると心を開いて話しはじめるのです。その後「ちょっと最近、調子悪そうだけど」と聞くと悩みや課題

 を話してくれます。コーチィングでは「どうしたいのか」という答えは本人が持っているのです。パーソナリティーを

 どんどんひもといていくと本当の目指したい方向に気づかせてあげることが出来るのです。そうすれば部

 下は自ら頑張り始めるのです。

・目標は小さすぎてもいけない。行けそうで行けなさそうなギリギリのところを一緒に考える。そこに設定さ

 れた時に人間は一番、能力を発揮できるからです。

・レビューの場でも一番ダメなケースはマネージャーが一方的に話し部下を評価する場にしてしまうことです。

 とにかく聞いてあげる。部下はもっと成長したい、頑張りたいと思っているのです。そして引き出してあ

 げるのがマネージャーの仕事です。そしてやるべき活動量をちゃんとクリアしたら「ステーキでも食べに行こ

 う」 これが意外に効くのです。

・レビューでは基本に忠実に部下の話を聞くことです。そして下記のステップどうりにやることが大切です。

 レビューの場はやる気やエネルギーを部下にあげる場であり、負や悩みを引き受ける場であるということです。

   1 事前準備  部下に半期の自分を振り返ってもらいシートにまとめてもらう

   2 情報の収集 半期であれば半期の情報を集め、振り返っておく

   3 実績レビュー  部下と一緒に実績を振り返る

   4 原因の追究 部下と一緒に良かった理由、悪かった理由を振り返る

   5 期待されていることの説明や検討 一緒に何を期待されているのかを考える

   6 業績アップのヒントの入手 業績アップのために何が出来るかを一緒に考える

   7 助言の提供 部下のためになる助言をする

   8 合意の獲得 部下から「やります」という言葉を引き出す

   9 期限の設定 いつまでに達成するかを部下と一緒に考える

   10これをどうフォローしていくか 部下の達成度合いを一緒に確認する

・マネージャーは部下が真面目には働いているか、プロセスをしっかり踏んでいるかを見ないといけないと思います。

・結果は2割増し、プロセスは8割増しで褒める 活動量こそが結果につながるのです。

通読してなるほどと納得するばかりです。優れた成果を出すマネージャーは部下の成長、幸せを第一に考え基本に

忠実で部下との対話に熱心なのでしょう。10のステップは良く出来ておりマネージャーに取り入れて欲しい内容です。

NO51 マネージャーとして大切なこと(1)

2018年6月2日

 原題は「マネージャーとして一番大切なこと」というタイトルでプルテンシャル生命保険会社に長く勤務され「25年間落ちこぼれチームを立て直し続けてわかったこと」

という副題がついた本を読みました(著者:八木昌実 ダイヤモンド社 2018年発行)要点は以下のとうりです。

 ・マネージャーに必要なものは才能や特別な能力ではありません。1つの後天的な技術であり、それを身につけ、実践する

        ことが出来ればマネージャーとして成功することが出来ます。

 ・マネージャーとして一番大切なことは「応援される存在」になることです。部下がマネージャーを応援しょうという意識を

        持ち、自らが勝手にやるべきことやっている、それが理想の組織、強い組織なのです。そのためにはマネージャーが

  「部下第一」で取り組むことです。部下を信頼し期待すると人は必ず応えてくれます。

 ・マネージャーの「視野の広さ」で部下の伸びしろが決まります。狭い井戸の中で生きていたらいい仕事はできません。

  また誰よりも一生懸命働いている上司に対して不快な気持を持つ部下はいません。

 ・普段から良好な人間関係を組織内に作っておくことです

 ・マネージャーはやっかいな問題から逃げないこと。難しいやっかいな問題こそ「第一優先」にして先に取り組まなけれ

  ばいけません。それと同じくらい優先してやらねばいけないことは部下から直接、声をかけられ相談されること、

  問われたことへの対処です。優れたマネージャーの共通項に「相談されるマネージャー」があります。自分のことばかり考え

  ているマネージャーには相談しにくいものですし、誰も相談しようとはしないでしょう。しかし部下に向き合っている

  マネージャーには声をかけやすいのです。何か相談されたら、必ず「そうか」と話に興味を示し、まずは聞くことです。

 ・「一緒に悩んでくれる人」を部下は求めています。9割のマネージャーは対話が足りません。

 ・組織には「2・6.2の法則」で考えることです。出来る人が2割、できない人が2割 中間が6割。上の2割は

  「上から数字が降りてきた」でもモチベーションを損なわずに働きます。重要なのは中間にいる6割です。しかしこの6

  割の人は環境や人に影響されます。そしてセンシティブでデリケートな人たちです。建前ではなく個人個人に合った動機付

        け、目標設定が大事です。自分から動こうとしない人には、ある共通点があります。それは「個人目標を持ってい

        ない」ことです。出来れば「人生の目標」を一緒に考えることです。 以下次号に続く

NO50 新しい事に挑戦する

2018年4月5日

 4月に入って東京に日帰り出張しました。午前中に移動して昼からお客様とミーティング、6時から8時まで食事・飲み会の席を作っていただき8時20分の新幹線に乗り、12時前に帰阪、風呂に入って1時頃就寝しました。40~50代のビジネスマン時代と同じように普通に東京へ日帰り出張できる体力を作ろうとここ数年、毎日40~50分のウオーキング、週1のゴルフを欠かさずやってきまして「疲労困憊」疲れましたが無事出来たことに一安心しました。まだまだやれると・・・

また3月から3か月で10キロダイエットに取り組んでいます。過去何度も挑戦して失敗しているのですが今回1ヵ月目はやっと3キロの体重減が出来、何とか目標を達成したいと頑張っています。そんなこともあって「仕事」「体力づくり」「趣味」など自分で工夫しながらいろんな事に「挑戦する」「工夫する」楽しみを感じています。

人生やっぱり何歳になってもいろんな事に好奇心を持ち挑戦し続けることが大事なのでしょう。一方趣味では木曜日のTVプレパドの影響もあり1年前から「水彩画」教室に月2回のペースで通いながら絵を描いています。もう12~13枚仕上げました。自宅に3枚ほど架けて悦に入っていますが新しい事に挑戦することは楽しいものです。

出張先では将来先進的な会社を創るため「新規開拓」「人材育成」「IT活用」について若い人たちと真剣勝負で話しあいましたが、こうした議論を行い、質を高め、新たな気づき、取り組みが進んでいけば一人1人の社員の皆さんの成長、会社の発展に資するものと思っています。但し日頃お客様の本社でさまざまテーマで議論をしているせいもあり現場で働いている人たちとの意識の差やギャップがあり驚く意見に出くわす場面があります。「良く現場のことが分かっていないな」と反省することもしばしばです。もっともっと現場を知ることが大事だと思い知らされました。

現場を知り、また教えてもらいながらトータルで会社や働く個々人にとってプラスになるように意見集約をしていくつもりです。結局会社も個人も時代のニーズを先取りしながら現状とのギャップをうずめ新しい事柄に挑戦する中で新しい仕組みと人が育ち成長と発展があるのでしょう。訪問先で「いろんな事に意識を高め、挑戦が当たり前の風土をつくること」が大事なんですねーということで帰阪した次第です。

NO49 乱気流の時代の経営.

2018年2月24日

 世界的経営思想家P,F,ドラッカーが1980年「乱気流の時代の経営」で企業が生き延びるために必要なことは4つあると指摘しています(出典:「乱気流の時代の経営」邦訳は1996年上田惇生訳ダイヤモンド社/「われわれはいかに働き、どう生きるべきか」P,F,ドラッカー述、上田惇生訳ダイヤモンド社2017年発行)

 ・第一に、資源を機会に集中すること

 ・第二に、資源の生産性を上げること

 ・第三に、成長をマネジメントすること

 ・第四に、人の育成に注力すること

<資源を成長に集中する>

 真に重要なものに集中しなければなりません。機会を追求するために脂肪をそぎ落とし昨日を捨てるのです。

 したがって第一に必要なことは自らの貴重な資源を機会に集中することです。

<資源の生産性を上げる>

 第二に必要なことは資源の生産性を上げることです。あらゆる資源の生産性が危機的な状況にあります。

 需要サイドにおいてエネルギー、環境、都市開発、輸送、農業など眼前にある機会のすべてが資本集約的です。

 他方供給サイドでも先進国では人口構造の変化を受けて資本形成が低迷、資金の供給が不足します。したがって

   早急に資源の生産性を上げなければなりません。資金の生産性、時間の生産性(労働生産性)を上げることです。

<成長をマネジメントする>

 主要資源の生産性を下げる成長は不健全であり、生産性を上げる成長は健全です。あらゆる製品、

 あらゆる活動、あらゆる事業について健全な成長か否かを点検し健全な成長を図らなければなりません。

<人の成長に注力する>

 現代は組織からなる「組織の時代」です。それら組織のすべてが経営者やマネージャによってマネジメントされているのです。

 社会の行方が、明日を見通し、計画し、組織し、資源を配賦し、目標を設定し成果を評価し、そして何よりもリードしマネ

 ジメントし人を配置し、やる気を起こさせ、育成することを知っている経営者やマネージャたちに依存しているからです。

 乱気流の時代にあって経営者やマネージャの姿勢、能力にかかっています。人を育成し責任ある地位に就ける、また彼らを

 生産的な存在に高めることこそが最大のチャレンジです。

乱気流の時代の経営はドラッカーが言うようにこの4つのことをひたぶるに取り組む企業が生き残っていくことでしょう。

NO48 キャノン復活の兆し

2018年1月23日

 キャノンは1980年代から注目している日本を代表する時価総額5兆円、20万人の世界企業です。キャノンの企業理念は「共生」世界で親しまれ尊敬されるグローバル優良企業(主要経営指標で世界トップ100社)を目指しています。そしてキャノンのDNAは「人間尊重」「技術優先」「進取の精神」の3つであり「全体最適」「利益重視」の意識改革により「健全な拡大」を目指しており「三自の精神:自発、自治、自覚」が基本にあります。

特に1995年に社長に就任された御手洗富士夫社長(現会長、CEO)の陣頭指揮のもと2008年のリーマンショック後業績低迷の時期を経て今復活の兆しが見えるようになってきました。こんなうれしいことはありません。

「どん底に落ちて『なにくそっ』と思って耐え忍んで本当に苦労して苦労した。それでも一生懸命成長力のある企業を探して買うことができた。4つの新規事業がそろい成長が見込める状況になった」と御手洗会長の言葉です(日経産業新聞2018、1、17、18,19日号)なにくそ10年の歳月を耐えて4つの新規事業を得られたのです。

この間1兆円を投じて新しい事業を買収、今後は医療機器を大黒柱に新規事業で1,5兆円の売り上げ増、純利益10%を目指し野心的な挑戦が始まります。

 ・16年に6655億円で東芝メディカルを買収 画像技術を活用した新製品を投入(医療機器)

 ・15年に監視カメラ世界首位のアクシス(スウェーデン)を買収(ネットワークカメラ)

 ・1000億円で買収したオランダのオセ社と協力(商業印刷)

 ・キャノントッキが手掛ける有機ELパネル製造装置の受注が急増(産業機器)

もともとキャノンは事務機とカメラで首位を走る世界優良企業でした。業績は次のとおりです。しかし事務機とカメラだけでは業績を上げ続けることは出来

ません。2007年の最高業績からリーマンショックの影響もあり9年間業績不振が続いていました。新規事業のM&Aは必要だったのです。

・1995年連結売上2兆858億円、営業利益1494億円

・2007年連結売上4兆4813億円、営業利益7566億円

・2016年連結売上3兆4001億円、営業利益2289億円

・2017年連結売上4兆4813億円、営業利益7566億円

新規事業は企業の戦略方向と合致し且つ競争力があり成長余地が大きいことが大事です。ともすれば買収相手の過去の成功や成長の軌跡から過大に評価を

して失敗をすることが多いのですがキャノンは粘り強く、買収相手を見極め4つの新規事業を射止めたのです。

私は新規事業で失敗の経験がありますので、じっくりと構え成功が見込めるキャノンのM&Aのケースには共感を覚えます。復活を確信しています。

NO47 長期的競争優位の幻想

2017年12月27日

 コンサルとして4年、企業の栄枯盛衰・消長はどうして起こるのか、何故今まで業績が良かったのに業績不振に陥るのか考えてみました。

ここにある資料の一部を紹介します。

それは慶応義塾大学大学院教授磯辺剛彦氏の1995-2000年調査(500社)ですが「長期的競争優位の幻想」という資料です

 1 調査対象企業の500社の87%が「過去成長がストップした経験」がある 「成長を続けている企業」は

           13%しかない

 2 その後成長がストップした経験を持つ企業の10年後、「上昇基調にあるのは46%」「横ばいまたはマイ

             ナス成長 にとどまっている企業が54%」もある

 3 さらにその後「横ばいまたはマイナス成長にとどまっている企業」の67%が「消滅」している 「上昇基

   調」に転じた企業は7%に止まっている 残り26%は「横ばいまたはマイナス成長」が続いている

経営は生き物です。ある大手の税理士さんに聞いたところ「創業して3年、業績不振に陥っている企業は70%を

占めます」と。それほど経営を維持し発展させることは大変なことなのです。

経営は3つの要素から成り立っています。

 1 企業の方向づけ(戦略)

 2 資源の最適配分 新たな投資の有無

 3 人を活かし動かすこと

「企業を存続し儲ける」ことは誰しも考えることですが現状のやり方だけで「長期的競争優位」を確保し「業績向上」を図ることは出来ません。「幻想」なのです。「市場の変化」「顧客ニーズの変化」「新たな競争相手の台頭」があるからです。常に変化に対して経営改革や製品開発、市場(顧客)開発が必要なのです。「儲かっていない企業」「業績低迷の企業」に共通するのは「トップの危機感の欠如」「あきらめ」というケースもありますが具体的には①市場や顧客、競合の変化に鈍感、熱心に情報収集をしていない②上にあげた経営の3要素が機能していない③方針や計画はあるが実行しやり遂げていないことです。トップに限らず管理者各層が社員と一体になってやり遂げる文化、風土を醸成し企業の発展に向かっていかなければなりません。まずは、ここぞという分野、顧客層、方策を絞りターゲットを定めて「一点突破」全力で行動を起こし風穴を開けることです。事態は必ず開けてきます。

 

 

NO 46 不正を考える

2017年10月27日

最近、大手企業の不正が相次いで発覚して驚いています。

1つ目は日産自動車の資格を持たない従業員が完成検査に従事していたという事案。9月29日に公表、そして10月20日まで国内向け車両の出荷を停止。その結果国内販売が前年同月比20%減となっています。2015年3月東洋ゴム工業で建物の免震ゴムの性能データー偽装、2016年4月三菱自動車で燃費データー不正が発覚したばかりのことです。またスバルでも本年10月26日無資格検査を行っていたことを公表しています。

2つ目は昨年6月に発覚した神戸製鋼、ステンレス鋼、線の強度偽装を受けアルミ、銅事業部門でも今年8月に自主点検が行われましたが、同部門でも製品データー改ざんが常態化されていたことが判明、経営陣に報告され、改めて全社を対象に不正を総ざらいする「緊急監査」に乗り出しました。(日本工業規格JISの基準を外れた製品の出荷した疑い)しかしアルミ・銅製品の生産拠点の1つ、長府製造所(山口県下関市)の管理職を含む従業員らは改ざん前の本当のデーターを提出せず自主検査と緊急監査をすり抜けたことが判明。他にも山口県押出工場、子会社の神奈川県秦野工場でも同様のことが起こっていました。

この事態に経産省は「事実の信頼性を根本から損なう」と指摘、チェック機能も働かない事態に外部識者だけからなる調査委員会が立ち上げられています。神戸製鋼所のトップはそのたびに謝罪会見を開き「申し訳ない以外の言葉がない」と謝罪と釈明を繰り返しています。また10月27日の日経新聞で「神鋼、JIS認証取り消し、10年で3度目の不正」という記事が掲載、『ずさんな管理体制への批判は免れない「日本ブランド」に傷つけた』と論評、また朝日新聞では「こうした事態は企業の体質か、企業風土か、意識の問題か」という問いかけをしています。根の深い話です。

3つ目は政府系金融機関である商工中金の不正融資問題です。不正融資発覚の発端は商工中金鹿児島支店次長の疑問から「危機対応融資(地震や台風などの災害、金融危機などで業績が悪化した中小企業を低利で支援する制度)」の稟議書の添付資料に改ざんをしたかを問うたところ、担当者から要件を満たすために売上高などを改ざんして減らしたことが判明、これを受けて全店調査、さらには第三者委員会による実態調査を行いました。10月26、27日の日経新聞で「ほぼ全店で444人、4609口座の不正があり約800人が処分、社長が辞任表明、後任は民間から起用、経産省2度目の改善命令」「不正を見逃した企業統治の欠如などから経営責任は重大」と報道しています。

以上の3件の不正報道を見ると、いずれも「現場任せ」「コンプライアンス(法令遵守)」「コーポレートガバナンス(企業統治)」が効いていないことを実感します。一方現場では不正と分かりながら目標達成や顧客との納期約束など「組織の論理」で改ざんを繰り返していたことが分かります。しかし「強い現場」は必要ですが「コンプライアンス」「ガバナンス」が優先されなければ不正は繰り返され社会・顧客の信頼を失います。もう一度信頼を取り戻し2度と「不正を起こさせない現場づくり」「コンプライアンス」「コーポレートガバナンス」を徹底していきたいものです。

NO45 幸福について

2017年10月9日

毎年国連が「世界幸福度ランキング」が発表しています。

それによると17年度は1位ノルウェイ 2位デンマーク 3位アイスランド、4位スイス 5位フィンランド 6位オランダ 7位カナダ 8位ニュージランドとなっており北欧が高くなっています。アメリカは14位、日本は51位となっています。

この調査は6つの項目で調査されています。

1、健康寿命 

2、国民1人当たりのGDP(国民総生産)堅調な経済成長

3、社会的支援(困った時に頼ることが出来る親戚や友人がいるか/良好な人間関係)

4、社会への信頼(政府や企業は腐敗していないか)

5、選択の自由(自分の人生において自由に選択できるか/自分に適した生き方をする自由)

6、寛容さ(過去1か月の間に寄付をしたことがあるか)

以上の項目で1~10の評価を下します(数値が大きいほど評価が高くなる)この6つの数値の平均値から幸福度を導き出しています。

幸福は「心が満ち足りていること」「「幸せとも」言えます。具体的には「経済的に困らない」「仕事にやりがいがある」「つながりに恵まれている」「人の役に立てる」などの点が共通してあげられているようです。そして「病」や「老い」も含めて問いかけていますが、これらを幸福、不幸の直接的な尺度として見てはいないように思います。

また「所得が高い」人の方が幸福度が高い傾向にありますが「所得が低い」という違いが幸福の大きな差になってはいない場合もあります。別の幸福度調査で幸福度世界一のコロンビアでは低所得者の純粋幸福度=77に対して高所得者の純粋幸福度=87でその差はそれほど大きくありません。他方先進国では収入の多寡が幸福度に大きな開きを生んでいます(例:イギリスでは低所得者の純粋幸福度=10に対して高所得者の純粋幸福度=67)

会社経営でみると単純に社員の給与が高ければ高い方がいいという訳にはいきませんが社員の幸福追求に資するように「役割・成果に応じて処遇する」ほか「仕事にやりがいがある」「つながりに恵まれている」「人の役に立てる」など社員満足度の向上に取り組むと共に社員の成長と成果を促し会社の発展に取り組んでいくべきでしょう。個人では「人生、山あり谷あり/上り坂、下り坂、まさか」はつきものですが、自分らしく「生きがい」を見つけポジティブ(積極的、肯定的)に、そして懸命に生きる中にそれぞれに見合った幸福があるように思います。いづれにしても幸福は向こうからやってきません。こちらから幸福をつかみ取れるように向かっていかなくてはいけないでしょう。

 

NO 44 グリット

2017年9月7日

 成功者が共通して持つ「グリット」という能力・・・才能でもない、努力でもない第3の要素。それは「物事を最後までやり抜く力」というのです。この新説を発表したのは米国のアンジェラ・リー・ダックワースというペンシルバニア大学教授で女性心理学者です。今この本は世界中でベストセラーになっています。その結論を得るまでアンジェラは4つの現地調査を行いました。   

 

1つはアメリカ、ウェスト・ポイントにある軍事教育学校で、厳しい軍事トレーニングに耐えて生き残る入隊者と耐え

切れず中途退学していく入隊者の予測

2つ目にナショナル・スペリング・ピーという学校で、 どの生徒が生き残るかの予測

3つ目に過酷な環境の教育現場で働いている先生方を調査し「どの先生が教育現場に残り、その内、最も生徒に影響を

与え、その生徒が持つ学力を引き出し結果に結びつけることが出来た先生は誰か」を研究したそうです

4つ目に一般企業で「どのセールス担当者が生き残り、トップセールスを記録したのは誰か」を調査したそうです

これら4つの異なる調査研究の結果、成功を収める人に共通してある1つの性格を持っていることが明らかになったというのです。それが冒頭の「グリット」「やり抜く力」なのです。

成功者が持つ共通点「グリット」とは物事に対する情熱であり、また何かの目的を達成するためにとてつもなく長い時間、継続的に粘り強く努力する事によって、物事を最後までやり遂げる力のことです。

「グリット」はスタミナを必要とします。1つの夢や目標を実現するために毎日毎日、夢中になって頑張り続けることです。グリットは短距離走ではなく、長距離走なのです。

さらに数年前、シカゴの公立学校でグリットについて研究を始め数千人の高校2年生を対象にグリットに関するアンケートを行い1年以上の追跡調査を行った結果、グリットを持っている生徒は卒業する確率が極めて高いということを明らかにできたというのです。

成功者の皆さんは「なるほど」と思われると思いますが、永年成功に必要なのは努力か、才能かという議論に1つの答えを出したようです。誰でも、どんな分野でも一流になれる最強、最速のメソッドが「グリット」という訳です。

出典:インタネット情報、「GRIT(やり抜く力)」アンジェラ・リー・ダックワース著 神崎朗子訳 ダイヤモンド社刊