NO43 ヤマトとセブンイレブン(2)

2017年7月30日

   一方セブンイレブン・ジャパンは1973年11月に創設、翌74年5月15日、東京都江東区の「豊洲店」がフランチャイズ第1号として産声を上げました。そして売上高・経常利益とも日本一の小売業に育て上げたのがセブンイレブンの鈴木敏文さんです。現在セブン&アイHLDGSの業績は売上高6兆円、経常利益3500億円(2017年2月期)です。

40年前の百貨店、スーパー以外の街の風景は商店街があり、そこに酒屋や野菜や果物店、衣料店、生活の雑貨店や食堂等でにぎわっていました。しかし今では百貨店(6兆円)、スーパー(13兆円)が伸び悩んでいる中でコンビニエンスストア―(10兆円)だけが毎年売上を伸ばしています(2000年:6,7兆円)。

国内のコンビニエンスストアーの数も55000店もありセブンイレブンの4,8兆円(19400店)、ローソンの1,9兆円(13000店)、ファミリーマートの1,7兆円(17000店)と続いています。この3社で全コンビニ売上の80%を超えています。

私の家の周り1km以内にスーパー3店舗の他、セブン3店、ファミリーマート2店、ローソン1店がありますが戸建て住宅やマンションが多い地域でもあり、どこも繁盛しています。中でもセブンの3店舗はここ1~2年に出店されましたが、やはりセブンイレブンの品揃えが一番魅力的だと思います。

  ・惣菜、冷凍食品が特に美味しい 街のレストランに負けない美味しさ

  ・弁当やおにぎり、パン類、洋菓子、和菓子も俊逸

コンビニ全体がATMを常設、酒類やドリンク類が揃っている、PB(プライベートブランド)も充実、チケットサービス、通信販売代金収納業務、雑誌や書籍、栄養ドリンクや医薬品販売、コピーサービス、挽きたてコーヒーの提供とメニューの幅がどんどん広がっています。「近い」「便利」「品揃えが豊富」というコンセプトがお客を引き付けています。逆に残念なことは街の酒販店の減少やパンや精肉店、魚屋、お惣菜店等の旧来のお店が減っていることです。

セブンイレブンの経営理念は

『価値ある商品やサービスの提供を通じて、時代の変化に柔軟に対応し「便利の創造」に努める』『信頼される誠実な企業』を掲げ、顧客ニーズを汲み取り、その実現にたゆみない努力を続けていることが分かります。最近セブンの冷凍食品の焼き飯を購入、あまりの美味しさに舌を巻くほどでした。1つ1つの商品、サービスに品質の高さとこだわりを感じました。想像以上にコンビニは進化しています.流通業界に詳しい石川和夫氏によればセブンイレブンの強さは「商品力」「店舗の多さ」「ブランド力」でありますが他のフランチャイズにないものとして全国1400人以上いるFC(地区毎にいるオペレーション・フィールドカウンセラー)会議を隔週で東京本社に一同に会し経営方針や経済情勢分析、新商品・サービスの紹介、成功事例・ケーススタディーの共有など本部施策を徹底する「徹底力」があるというのです(2006年まで30年間毎週開催)。この話は以前から驚きをもって聞いていましたがセブンイレブンの強さの秘密がこの「徹底力」にあるのかもしれません。

 

 

 

 

NO42 ヤマトとセブンイレブン(1)

2017年6月30日

 戦後日本の経済発展の中でもひときわ大きなイノベーションを起こし、新しいビジネスモデルを作ったのはヤマト運輸とセブンイレブンの2社だと思います。もちろん携帯電話やスマートフォンの登場で近年世の中が大きく変わったというのもありますが・・・。さらに日本のロボット、生命科学は世界の先頭を走っています。自動車も電機以上に世界に冠たる地位を築いています。すべてイノベーションの結果です。本論に話しを戻しますが1つはヤマトが宅急便という市場を形成、もう1つはセブンイレブンがコンビニエンスストア―という小売りの業態を生みだしました。35年ほど前にマーケティングの勉強を始めた頃はこの2社の事例学習が盛んでした。この2社に大変刺激を受け感動しました。経営には顧客の「便利」「満足」「感動」の追求が無ければいけない、そして生き残るためには「イノベーション」を起こし続けなければならないと・・・経営にはこの2つが大事です。

宅急便のコンセプトは「戸口集荷」「翌日配達」「地帯均一料金」というものでした。今も開発当初のコンセプトが活きていますし、当時の小倉昌男社長の「サービスが先・利益は後」「顧客第一」「全員経営」という理念も生きています。先見の明がありました。宅急便誕生以前は小口荷物を送る手段が極めて限定され不便でした。当時運輸業界では「小口荷物は集荷・配達に手間がかかり採算が合わない。小さな荷物を運ぶより大口の荷物を運ぶ方が合理的で得」という常識でした。しかし小倉は「小口の方が1㎏当たりの単価は高い、小口貨物をたくさん扱えば収入が多くなる」と小口荷物に着目して事業を特化、需要を創造したのです。もともとは百貨店三越の専属運輸会社だったのです。それをやめて宅急便に賭けたのです。

宅急便がスタートしたのは1976年ですから、約40年の歴史です。私が40年前、新婚旅行で沖縄に行った折、美味しかったオリオンビール中瓶1ダースを郵送しようとしましたが酒屋で断られ、手で下げて持ち帰ったことがあります。それほど当時は郵便局でしか小口配送の仕組みがなく、しかも6キロ未満の重量制限でした。今から見ればゴルフ宅急便、クール宅急便、国際宅急便など隔世の感があります。それはヤマト宅急便に3つのコンセプトと共に「サービスが先」「顧客第一」「全員経営」という経営理念があったからです。現場の声、お客様の声を事業に反映し続けたのです。 今では25㎏までOKです。

今や宅配便(宅急便はヤマト運輸の個別名称)の年間取扱個数は36億個と言われています(2014年実績)トップがヤマト運輸46%、佐川急便が34%、日本郵便が12%と3社で90%を占有しています。総需要としては3兆円くらいでしょう(ヤマト運輸の売上規模は1兆4000億円、従業員195000人)

NO 41 赤字企業を考える

2017年5月29日

40数年のビジネス人生で身近な取引先で赤字企業から倒産した事例は5社あります。

 1社は本業以外に手を出して失敗、資金繰りがうまくいかず倒産、

 2社目は社長が本業に熱心ではなく番頭格のベテランのNO2でもっていましたが、

 その方が退職して業績不振で不渡りを出し倒産

 3社目は単純に本業の業績不振で倒産という形でした

 最後の2社は業績不振が続き特殊品に特化、しかしメイン顧客の業績悪化から倒産

1~3社は商社、最後の2社はメーカーでした。1度は債権者会議に出席しましたが怒号が飛び交う中、経営者、

家族の悲惨さが目に焼き付いています。

今も赤字から脱却すべく再建中のお客様のコンサルを行っていますが、抜け出せない最大の原因は「現状の中で今

までと同じやり方で精一杯努力をされているが、なかなかうまくいかない」というケースが多いということです。

単純な過去の成功体験を基にした努力、従来のやり方だけでは抜け出せません。

これは「同じお客に同じ商品を同じ方法で売っている限り売上は伸びない」ということの裏返しで「顧客」「商品」

「販売方法」のいずれかを変える革新的な取り組みがなければ現状打破は出来ません。大事なことは5つです

  1 「身の丈経営」:経営の安全運転に徹し、多角化や過度な成長、投資を慎む

    ビジョンを明確にし社員重視の経営に徹し、働く人のモチベーションアップ、着実な業績向上に取り組む

  2 得意な分野、ターゲットにする顧客層の絞り込み お客様の満足・支持が第一

  3 現状把握と分析 顧客のニーズにフィットする新商品の投入、商品・サービスの整理・充実

  4 有効な広告宣伝、販売促進、営業活動の実施

  5 儲けることを優先して、損益から逆算して経営計画、目標を設定して全社一丸になって達成する

また競争に負けているのであれば、なぜ負けているのかの要因分析、勝つ為の方策の整理と実行が必要です。赤字になったり、倒産するのには理由があります。構造的要因もあります。また5年、10年に1度くらいは経済的な大きな環境変化はつきものです。市場・顧客は変化しています。市場と商品の面から現状を分析して何が必要なのかを知り再起を期すべきなのでしょう。私も担当しているお客様を必ず黒字化し、成長軌道に乗せる手助けをしていきます。

NO40 倒産に学ぶ

2017年4月28日

   最近「あの会社はこうして潰れた」という本を読みました(帝国データーバンク情報部 藤森徹著 日経プレミアムシリーズ 2017年4月発売の新刊)

第一線の調査マンが書いたものだけに多くの倒産事例が紹介されており学ぶところが多くあります。20~30年前の年間倒産件数は1万件くらいと記憶していましたが2009年12月に「中小企業金融円滑化法」が施行、銀行から借金返済の猶予を受けた約40万社の企業が延命されているそうです。そのため2016年の企業倒産は8164社と減少、「無倒産時代」とも言われています。しかし現実は身近なところで倒産は起こっています。

倒産の主な原因は「本業不振」が80%、「放漫経営」や「経営計画の失敗」等が多く占めます。いずれの場合も赤字経営、債務超過が続くと倒産の危機に直面します

さらに別の側面から倒産を掘り下げてみると以下のようなことがあります。

  ・産業構造の変化

  ・高齢化による人手不足

  ・事業継承の失敗、跡継ぎの背任

  ・為替の変動

  ・赤字経営を隠ぺいする不正会計、不正取引

  ・取引先企業の倒産から貸倒れによる収益悪化、不良債権による連鎖倒産

  ・本業以外の野放図な事業展開や無謀な投資、金融取引

  ・ガバナンス・リスク管理の欠落 既存事業とのバランス、顧客への説明責任不足

また老舗と言われる「業歴100年企業」の特徴というところで(P127)1つ目が事業継承(社長交代)の重要性、2つ目に取引先との友好な関係、3つ目が「耳の痛い話ができる」番頭の存在を上げています。そして老舗企業にとって大事なことは「本業一筋」「身の丈経営」の継続と経営者の「会社の存続と成長にこだわる執念」なのでしょう

最後にこの本の中で、これは重要だなと思ったことは経営者の「情報力」です。それは業界、同業者、経済などの外部情報もありますが、「内部情報」を集め分析する能力。「悪い情報や苦言を呈し体を張って止める者に耳を貸す、これができなくなることがワンマン経営者の陥りやすいワナ」と指摘しています。心すべきだと思います。是非一読下さい。

NO39 生産性向上策

2017年2月9日

 生産性水準が欧米に比べて50%程度低いことが37号で紹介《時間当たり労働生産性:日本(42ドル、4400円)に対して欧米(65ドル、6800円)》しましたが、この生産性向上策には6つあると言われています(出典:中堅中小企業の生産性向上戦略 関西生産性本部編 著者金井一頼氏他 清文社)自社にあった生産性向上策を実践して生産性を高めたいものです。

1 新しい製品やサービスの開発による生産性向上

 顧客価値を向上させる新製品・新サービスの開発は確かに新たな付加価値向上、生産性向上につながる

 と思います。それには顧客密着によって新たなニーズや顧客の困っている問題を解決する事によって新

 たな顧客価値提案、創造が可能です。

2 プロセス・イノベーションによる生産性向上

 マイケル・ポーターが明らかにした価値連鎖(購買→製造→出荷→販売・マーケティング→サービス)のプロ

 セスをイノベーションすることで生産性を向上させる方法で近年はICT(情報通信技術)を活用する

 ことによって価値連鎖をイノベーションする企業が増えており、中小企業庁(2008年)の調査によ

 ると労働生産性が高い企業ほど電子商取引を実施しているようです。

3 組織イノベーションによる生産性向上

 近年の組織イノベーションの顕著な特徴は企業のネットワーク化です。特に資源的に劣位な中堅・中小

 企業にとってネットワーク構築を通じて独自能力を磨き上げ、他の資源を融合することで生産性向上を

 図ることが可能となっています。また新事業創造を社内ベンチャーで行うことも含みます。

4 人事のイノベーションによる生産性向上

 人事のイノベーションとは人的資源の能力を高めたり、HRM(ヒューマンリソースマネジメント:人的資源管理:人

 材の獲得、活用、育成、管理などを中長期的視点から戦略的に人材育成を行っていこうとする考え方)

 を通じて生産性を高める方法です。「働き方改革」も含みます。

5 戦略のイノベーションによる生産性向上

 戦略イノベーションとは「ドメインの転換」「成長戦略の変更」「新たな競争戦略」「グローバル戦

 略」などがあります。また中小企業庁(2008年)の調査によると海外展開企業の方が非海外展開

 企業よりも生産性が高いと言われています。

6 ビジネスモデル・イノベーションによる生産性向上

 近年、顧客価値を創造するビジネスモデル・イノベーションが注目(アスクル、楽天、ユニクロ、ア

 マゾン、サウスウエスト航空)されていますが基本は新たな顧客価値創造提案型のビジネスモデルと

 言われています。

NO38 やり遂げない風土

2017年2月3日

 

  2月1日の日本経済新聞「私の履歴書」に昭和電工元社長の大橋光男氏の記事の一文に目が止

まりました。それは記事の冒頭、社長就任内定記者会見で「年間売上高に近い7000億円の

有利子負債を抱えている」「当社はぬるま湯につかっている。危機感がない」と率直に語り社

風の刷新に鬼になると公言されたくだりがあったのです。

実は経営とは経営理論では簡単に推し量れない社風や風土、習慣や慣行というものがあり、そこ

が経営を進める上で大きな障害になっている場合はそこに手を打たない限り会社は良くならない

と思っていたので思わず相槌を打った次第です。

過去、勤務する会社でも何十年も前から標準部品委員会というのがあって、技術者にとって何万

点の部品がコンピューターでQCDなど情報が揃い便利に使われていると思っていましたら、まっ

たくそうではなく機能していない事が分かって衝撃を受けたことがあります。通常メーカーの場合

は開発部門、設計部門にとって、こうしたインフラが整備されていなかったら、技術者が個々に情

報を集めて仕事をすれば、膨大なムダな工数を費やすことになります。こんなことも時々の課題や

問題として技術部門で取り上げられているにも関わらず長い間放置されていたのです。

担当者や担当の部長クラスの答えは「担当をつけてやってはいるのですが、他部門の〇〇がやって

くれなくて」と他責の答えが返ってくるばかりでした。結局「なんとかやり遂げよう」との方針を、

確認し2度、3度の挫折、失敗を経て完成してくれたことがあります。その時つくづく思ったことは、

「当たり前に出来ていると思っていることでも、当事者がやらされ感で仕事をしている場合、また中

心になる管理者が本気にならなければ悪しき習慣が蔓延して結果を出せない「ぬるま湯につかった状態」

というのが十分に起こりうるということです。

もう1つは大手顧客の大型物件が特殊仕様ゆえにいつも赤字に悩まされていたことです。

担当者は「一生懸命やってはいたんですが」という答え、担当の部長も「今後は何とか」とうこと

で、しかしいつも同じような結果を繰り返していました。赤字幅は1件で数千万円単位。将来のた

め、あえて赤字でも開発投資案件として捉える場合を除き、それを許していたら経営は成り立

ちません。結局、競争もある、顧客の要望もある、しかし「断じて黒字にして儲けるようにしよう」

ということで、その後、生・販・技が「縦割り組織の弊害」を乗り越えて真剣に見積もり段階からプロ

ジェクトを組んで取り組み、いろんな提案が顧客に受け入れられて大幅に改善できるようになったのです。

力を合わせればできたのです。会社経営をやる以上「やり遂げる風土」を醸成したいものです。

NO37 労働生産性が低い日本

2017年1月17日

 

この1月、日本生産性本部が発表した「労働生産性の国際比較2016年版」によると2015年のOECDデーターに基づく日本の労働生産性水準(就業1時間当たり)は42,1ドル(4439円)でOECD加盟35カ国中20位であったそうです。(生産性新聞:2017年1月15日号参照)

前々から気になっていたことですがGDPでは日本は世界第3位(1位米国、2位中国)でありながら、労働生産性ではこれほど低い事に経営者や働く人も問題意識を持たなければいけないのではないかと思っています。

・労働生産性とは稼いだ付加価値を1人当たり/1時間当たりで割ったもの

・日本の順位は1990年代から20位前後で推移(1時間当たり)

・主要先進7カ国でみると

      <時間当たり労働生産性>     <1人当たり年間労働生産性>

    5位の米国(68,3ドル・7189円)  12万1187ドル(1276万円)

    6位のフランス(68,6ドル・6908円)

    7位のドイツ(65,5ドル・6898円)

 20位の日本(42,1ドル・4439円)    7万4315ドル(783万円)

・7位のドイツの年間平均労働時間は1371時間(2015年)と欧州諸国の中でも短い部類にあり、

 多くの付加価値を効率的に生み出しています。

・日本の年間平均労働時間は1719時間(2015年)でドイツより348時間(月間29時間に相当)は長い

 のです。よってドイツの労働時間は日本より25%少ないにもかかわらず時間当たり労働生産性では50%高い水

 準(1,5倍の格差)の付加価値を稼ぎ出しています。

労働生産性を上げるためには分母の従業員数を減らすか分子の付加価値を引き上げるしかありません。従来日本では長時間働くことを美徳としてきた嫌いがありますがこれからは労働時間を短くして付加価値を向上させる道を歩まなければなりません。

私も今回労働生産性について欧米と比較してみて余りの低さに驚きました。欧米では定時で帰るというのが当たり前です。労働時間を短くして生産性を上げるには①「定時内の生産性を最大にする」「ムダなことはしない」という経営幹部、社員の意識改革②製品ラインの統廃合、付加価値の高い製品開発・投入、生産性向上につながるモノづくり改革③ITを駆使するなどホワイトカラーの生産性向上等が不可欠です。従来から慣習で行ってきた業務を見直し、会議時間の短縮などムダを省き本来やるべき事に集中すべきです。過去2社で生産性向上に取り組んできた経験から一定の投資は必要ですが3年あれば生産性を10~20%程度向上させることは十分可能です。是非とも10年くらいでドイツ並みの労働生産性を達成したいものです。

NO36 働き方改革を考える

2017年1月10日

 

 1月10日(火)日本経済新聞に上場企業301社の働き方改革に関する調査結果が掲載されました。

<関心が高い優先課題>

 ・長時間労働の是正・・・・・・・・・・・・・・・・・・73%

 ・女性の活用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67%

 ・子育てや介護などと仕事の両立支援・・・・・・・・・・65%

 ・仕事の進め方の見直し・・・・・・・・・・・・・・・・63%

 ・時間や場所を問わない柔軟な働き方の実現・・・・・・・62%

 逆に「賃金の引き上げ」は14%「非正規雇用の処遇改善」は8%に止まり関心が低いようです。

また<労働時間のあり方>では

  ・所定労働時間内の密度を高め、残業時間を短くする・・・84%

  ・短時間勤務の導入・・・・・・・・・・・・・・・・・・36%

  ・フレックスタイム導入などで自由度を高める・・・・・・28%

 と企業側は「多様な働き方を認めないと生産性も上がらない」と見ているようです。

 (表) 政府への期待は微妙に異なる(数字は順位)

企業側

政府が課題とする9項目

正社員側

社会保障など女性や若者が活躍しやすい環境整備

長時間労働の是正

病気の治療、子育て、介護と仕事の両立

テレワーク、副業、兼業など柔軟な働き方

賃金引上げ

高齢者の就業促進

転職・再就職支援、教育

外国人の受け入れ

同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善

 一方上記の表(記事から転載)のように政府が課題とする9項目に対して正社員側の期待は「賃金の引き上げ」が1位になるなど微妙に違うようです。しかし「長時間労働の是正」では企業側も正社員側も同じ期待ランクにあり働き方改革の最優先課題であることは間違いありません。最後に従業員に技能の習得を促したり、上司が会社にいる間は部下も残るという悪弊をなくすという「仕事の進め方」や「社内風土改革」を進め生産性を高め日本全体の成長につなげることが大事であると結んでおり、私もまったく同感です。いよいよ「働き方改革」が動き出します。働き方改革の方向を理解して産業界全体で推進していきたいと思います。

NO35 社員重視の経営

2017年1月8日

 

 私が25年以上経営に携わってきた中で得た経営の要諦は2つです。

1つは「経営理念やビジョンに基づいて経営戦略や事業戦略を定めひたぶるに実行すること」「問題を先送りしないこと」です。そして2つ目は「社員重視の経営を進め社員に存分に働いてもらう環境を整えること」です。規模の大小にかかわらず優良企業はこの2つを実践しています。

はじめの経営戦略は外部環境や競争環境を良く知り顧客のニーズに応える「顧客価値創造経営」を着実に推し進め企業価値向上に取り組む以外にありません。単に売上、利益を追っても成果は上がりません。事業環境が根本的に悪く廃業するしかないという以外、必ずどこかにチャンスや成長に芽はあります。本稿では「社員重視の経営」を取り上げます。

 「社員重視の経営」を進めるのに3つの大事なことがあります。

1つは経営理念やビジョンの中に「社員重視の経営」を宣言し実践することだと思います。企業は単に利益を上げるためのものではありません。もちろん利益は企業を維持・存続・発展させる上で必要不可欠な経営資源です。ドラッカーが言うように企業は「顧客の創造」が使命です。顧客に価値を提供するがゆえに顧客から支持があり、その結果、売上・利益があります。その顧客価値を創造するのは人材であり社員であると考えます。それ故に「人間尊重」「社員重視の経営」が必要なのです。

 社員が誇りをもって意欲的に働いてくれるようになれば必ず会社は繁栄します。社員の幸せを願う会社であれば社員は会社の発展を願って仕事に取り組んでくれます。

2つ目は経営サイド、経営トップ、さらには部門トップにある人が挑戦的、意欲的に業績向上、企業価値向上に取り組む事です。タテマエだけではなくホンネ、実態もそう取り組む事です。そういう環境を全社で創り出すことです。私も20代、30代の平社員の頃、経営サイド、部門トップが意欲的に業績向上、企業価値向上に取り組む姿に接し、職務や仕事も増えましたが現状に甘んじることなく新しい事に挑戦することが当たり前の環境に育てられたと思います。現状のやり方を踏襲して忙しい忙しいと言っているだけでは会社の進歩・発展も社員の成長もありません。改革し、生産性を上げ、新しい事に挑戦することが当たり前の職場環境にすることが活気溢れる職場づくりに欠かせません

3つ目に人事制度、働く人にやさしい制度設計、人を育てる組織が必要です。もちろん会社に余裕がなく週休2日制の導入がまだまだ難しいのに社員重視の経営をしなくては人が集まらないと導入することはお薦め出来ません。実力を備えてから導入すべきでしょう。人事制度で大事なことは役割を担い成果を出し能力のある人に昇進・昇格のチャンスを作ること。影日向なくコツコツ働いて役割を担ってくれている人に報いること、そして公平・公正な評価が出来るように工夫することです。もう1つは30年以上前の年功序列制度の古い賃金制度のまま運用している会社がまだまだ多いと思います。役割主義人事制度へ転換・見直すべきでしょう。そして上司が社員一人ひとりの可能性を見出し「任せてやらせてみる」人を育てる職場にすることです。連合艦隊司令長官山本五十六の名言「やってみせ、言って聞かせてさせてみて、褒めてやらねば人は動かじ」という努力を全職場で実践することです。一説によると70%の上司、幹部は現業に追われ人を育てていないと言われています。幹部から意識改革が必要です。

NO34 売上を倍増 黄金の知恵

2016年10月25日

 

10月23日(日)ABCテレビで「絶好調の日本企業に潜入 大増収の秘密“黄金の知恵”」という番組が放映されました。いずれも経営に役立つ話しばかりですので紹介します。

ケース1 顧客の声を活かした高速バス  ウィラートラベル

 ピンクの長距離高速バスの運営会社で、顧客の小さな声を取り上げて業績アップを実現

 例えば東京―大阪間の深夜・夜行バスでは4800円から5800円という基本料金で全国主要都市を低料金で結ぶと共に「シートラインナップ」が凄い、女性客も多く、夜間バス移動の最中、リクライニングで寝る場合、顔を隠すカバーシートが付いていたり安心して利用できる工夫が満載、また全国各地のイベントに合わせた旅プランを提案、往復バスと宿泊セットで予約できるようにするなど売れる仕組みの進化が凄いと思います

ケース2 他社と真逆の方法で顧客満足 焼肉きんぐ 物語コーポレーション

 通常5名で店を切り盛りするところ10名の陣容でお客様対応を行っています。「お席で注文、食べ放題」を売りに全国展開、それこそ3分に1回ぐらいの頻度で各テーブルに従業員が駆けつけ、美味しい肉の焼き方、食べるタイミングを笑顔で説明してくれる。お客の反応は良好で接客や満足度が高い。アルバイトが中心だが「キラキラおもてなし手当」「スペシャルトレーニング手当」など時給をアップする制度を数多く設け従業員のモチベーションアップや接客に力を入れ業績を大きく伸ばしています。

ケース3 工場解体 べステラ(株)

 ただの工場の解体屋ではありません。特許を14件保有している。特徴的なものに「リンゴの皮むき工法、工場解体、無火気工法、ガスタンク解体、3D計測サービス」という言葉が出てくる。大型のガスタンクの解体費用も工期も通常1億円かかるところを1/3に 40~50年前に多くの工場やプラントが全国に建設。それが今、解体の時期に来ている。それを予測して技術を蓄積、人材を育て今、業績を大きく伸ばしている。さすがという他ありません。

ケース4 厳選された中古リノベーション住宅販売 株式会社ツクルバ

 東京の厳選した中古リノベーション住宅を紹介する「カウカモ」オンラインマーケットです。『「一点もの」の住まいに住もう』をキャッチフレーズに10000件からさらに厳選100件だけを紹介、いずれの物件もデザイン性が優れ、理想の住まいを紹介、業績を伸ばしています。

その他、食品製造機械 レオン自動機(株)の場合は製パン機・包あん機など食品の計量、分割、包み込む自動製造機械の専門メーカーですが、この会社の凄いのは単に機械を売り込むのではなく食品の新しいレシピの提案から購入時の技術サポート、製造現場の技術サービスやアフターサービスなど顧客のニーズに徹底して応えています。そこが強みです。また中古漫画全巻セット販売 全巻漫画ドットコム (株)リトバの場合は中古漫画全巻セット販売に特化して業績を伸ばしています。

いずれのケースも「ニッチな分野に集中特化」して「他社との差別化」を徹底して実行しています。見方を変えれば成熟市場の中で勝負して勝てる領域をつくり、勝てる戦術・サービスに粘り強く取り組み成長を勝ち取っています。全社が一丸になっています。決して低コストのみを追ってはいません。経営の強い意志を感じます。