目先の業績達成に追われ人材育成にまで手が回らないプレイングマネージャーが多くなっています。その分部下育成が後回しになっています。今回取り上げた書籍は、題名が「上司の9割は部下の成長に無関心」(著者:前川孝雄 PHPビジネス新書)、副題は「人が育つ現場を取り戻す処方箋」です。まず部下から見て「仕事を身につける上で役に立った上司からの育成指導」(出典:労政時報2012,4,27発行 管理職309名のアンケート)を見てみます。
1位 リーダーシップをとる機会を与えられた 39,2%
2位 多様な経験の積める仕事を与えられた 34,0%
3位 なるべく自分で考えるような指導をしてくれた 26,9%
4位 仕事に対する姿勢を指導された 25,6%
5位 能力の伸長に応じて次の仕事を与えられた 19,4%
6位 仕事を達成する喜びを教えてもらった 16,8%
7位 職場でのコミュニケーションの時間をとってくれた 16,2%
結局人材育成といっても人は仕事の現場で成長するものであり、上司の役割が大きいと言えます。また「少し背伸びが必要な仕事」を与えることが人を一番育てるということです。人は自分の能力を超える仕事を任され、周りの協力を仰ぎながらそれを乗り越え、その経験を振り返り、習得した知恵を自覚するという経験を通して成長していくのです。そのため上司が仕事の現場で部下に挑戦の機会を与え、成功に向けて支援することなくして、部下の育成はできないということです。そのためには「指示型」から傾聴、対話を通じて「考えさせる」「やるべきことを引き出す」「任せる」方向に舵を切ることでしょう
成長期の昔は挑戦が当たり前で「意図せずとも人が育った時代」でした。しかし現在は、年功序列、終身雇用が崩れ、低成長、成熟、人口減が前提になった社会では「工夫しなければ人が育たない時代」になったとも言えます。部下育成には時間はかかるものです。一朝一夕に成果を感じることは出来ませんが人が育つ組織と育たない組織では5年後、10年後で大きな違いが出てきます。また人の育成の喜びを味わえば病みつきになるほど魅力的な仕事でもあります。まずプレイングマネージャーの仕事を少し減らし、部下に仕事を任せ部下の育成に時間が割けるマネージャーとしての仕事をする時間を確保してください。そして会社として大事なことは部下育成の研修を行うと共に、部下育成の意識を高めそれらの成果を発表し共有し合う場を設け人が育つ職場を全社に広げることでしょう。