NO7 日本は都市国家へ脱皮を

2014年9月28日

9月27日の日本経済新聞朝刊17面コラム「大機小機」に人口減少時代の政策提言がありました。「日本は都市国家へ脱皮を」今年1番の記事だと思っています。主な内容は

  • 2040年に896市区町村が消滅する可能性があるとの予測があり地方創生本部が設置された。今後20年間で少子化の影響を受け1400万人の人口減少する中で地方の人口減少は避けられない(補足:日本創生会議ではこの5月全国市区町村1800の半数の896自治体を消滅可能性都市としている)
  • 高度成長期は都市への人口移動は経済全体の生産性を高め成長の源泉になった。人口増加時代は森林を切り開き食料を増産したが、人口減少時代は中山間地を手入れ不要な自然林に戻し大規模農業を目指すことである。
  • 地方の人口減少時代は広域ベースで主要地域ごとに数百万人規模の中核都市を形成し周辺部からの人口移動を促すコンパクトシティー化しかない。今後の成長分野である金融や情報サービス、さらに高齢者を対象にした医療や介護サービスも地域分散したままでは病院や介護のネットワークが間に合わない。むしろ都市部の高層住宅に高齢者を誘導する必要がある。
  • 豊かな国の大部分は北欧やシンガポールのように少ない人口が都市部に集中する形態である。人口減少社会で大都市へ人口が集中することは都市の規模の経済を活用する合理的行動だ。これを地方の過疎化をもたらす原因とみなし抑制すれば、都市も地方も共倒れになる。
  • 公共投資のバラマキで地方経済が復活しないことは経験済みである。中央から地方に権限と財源を大胆に移管し地方都市ごとに地域に合った独自の政策を追求し世界の都市との競争を活発化させるべきだ。単なる「地方の保護主義」は日本全体の活力を失わせるだけだとあります。

もちろん一足飛びにこの提言が実現できるわけではありません。しかしこうしたビジョンや構想の議論を抜きに個別対策に終始していては過疎が放置され、一貫した政策による新しい地域づくりが進みません。

5年ほど前に道州制に最も熱心な江口克彦氏(元PHP研究所社長、参議院議員)に現在の都道府県を解消して全国に700万~1000万人をベースにした地域主権型道州制(12州に再編、EU1か国のGDPに相当)の話を聴く機会がありました。その内容は現在の中央集権的な統治システムを解体再編して地域が自己責任と独自の判断で政策を展開していく「地域主権型道州制」の導入を目指す話です。そして基礎自治体の人口規模を行政コストが最も低下すると言われる15~40万人規模にして地域のニーズや特徴を生かした街づくりに取り組み、道州を主体にした地方政府をつくり「国」「州」「基礎自治体」の3層構造にして基礎自治体(市)で出来ることは「市」で、「市」で出来ないことは「道州」が担う、「道州」で出来ないことは「国」で担うということで将来の日本の統治と発展への道筋の話しにおおいに勇気づけられました。もう既にアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス等先進国で採用されている制度です。

道州制や都市国家の議論は今、熱をおびていませんが少子高齢化・人口減少時代にあって国のあり方を見直す基本になる大切な話です。また日本の統治の形を考えることは経営を考える事と一緒で将来のビジョンをつくらなければ個別最適・目先の損得の議論に終始し、いつまでも本質的問題の解決が進まずグローバルな競争に勝ち残れないと思います。