この5月、ケーブルTVで鑑賞した映画で、今までにない衝撃を受けた作品が「それでも夜は明ける」です。
この作品は今から150年以上も前、19世紀に実在した黒人男性の自伝から奴隷となった男の壮絶な日々を綴る伝記ドラマです。
実際には1853年に出版された伝記に基づいて作品が作られています。
丁度、アメリカ合衆国が1776年に独立宣言をした後、最大の内戦であった黒人の奴隷制存続を主張する南部11州と奴隷制度撤廃を
主張する北部23州が1861年から4年にわたって繰り広げられた「南北戦争」があります。
アメリカ合衆国大統領リンカーが出たのもこの時代です。
ですから、この物語は南北戦争前に南部で実際に起こっていたことを映画にしています。奴隷制は話には知っていましたが、これほど生々しい実態を知りませんでした。主人公ソロモンは自由黒人として教育も受け家族4人が幸せな生活を過ごしていました。ところがある時、南部の奴隷商人に身柄を拘束され家族全員が奴隷として売買され、それぞれがバラバラに農園で奴隷として働かされるのです。
家畜以下の扱いを受け自由は全くありません。サトウキビの栽培、刈り取り、家畜の世話、厳しい労働条件の中、農園主や管理者の意に反するものならむち打ちは当たり前、暗闇の獄舎に入れられる等信じられない扱いを受けるのです。気に入らなければ首をつるされる黒人もいます。その恐怖は尋常ではありません。人を信じられなくなるのです。何度も雇い主を変えられ奴隷として働く壮絶な人生を送ります。
そんな中で自由の身になりたい、家族ともう一度暮らしたいという希望を捨てず、何度も打ちのめされながら晩年、最後に自由黒人の権利を勝ち取り家族と再会、その夢を叶えられるという形で描かれています。
スティーブ・マックーイン監督作品 2013年アカデミー作品賞を受賞しています。
余りにも理不尽な奴隷制度の実態に驚くと共に、奴隷として働くこれほど壮絶な人生があるものかと驚かされました。自由と人権、民主主義がいかに大切か!「それでも夜は明ける」という題名のとおり、この作品は奴隷制度の生々しい実態を後世に残したいという願いと、自由と人権の大切さ、そしてあきらめなければ必ず「夜は明ける」「願いは叶う」と言うことを見る人に問いかけているように思いました。