NO35 社員重視の経営

2017年1月8日

 

 私が25年以上経営に携わってきた中で得た経営の要諦は2つです。

1つは「経営理念やビジョンに基づいて経営戦略や事業戦略を定めひたぶるに実行すること」「問題を先送りしないこと」です。そして2つ目は「社員重視の経営を進め社員に存分に働いてもらう環境を整えること」です。規模の大小にかかわらず優良企業はこの2つを実践しています。

はじめの経営戦略は外部環境や競争環境を良く知り顧客のニーズに応える「顧客価値創造経営」を着実に推し進め企業価値向上に取り組む以外にありません。単に売上、利益を追っても成果は上がりません。事業環境が根本的に悪く廃業するしかないという以外、必ずどこかにチャンスや成長に芽はあります。本稿では「社員重視の経営」を取り上げます。

 「社員重視の経営」を進めるのに3つの大事なことがあります。

1つは経営理念やビジョンの中に「社員重視の経営」を宣言し実践することだと思います。企業は単に利益を上げるためのものではありません。もちろん利益は企業を維持・存続・発展させる上で必要不可欠な経営資源です。ドラッカーが言うように企業は「顧客の創造」が使命です。顧客に価値を提供するがゆえに顧客から支持があり、その結果、売上・利益があります。その顧客価値を創造するのは人材であり社員であると考えます。それ故に「人間尊重」「社員重視の経営」が必要なのです。

 社員が誇りをもって意欲的に働いてくれるようになれば必ず会社は繁栄します。社員の幸せを願う会社であれば社員は会社の発展を願って仕事に取り組んでくれます。

2つ目は経営サイド、経営トップ、さらには部門トップにある人が挑戦的、意欲的に業績向上、企業価値向上に取り組む事です。タテマエだけではなくホンネ、実態もそう取り組む事です。そういう環境を全社で創り出すことです。私も20代、30代の平社員の頃、経営サイド、部門トップが意欲的に業績向上、企業価値向上に取り組む姿に接し、職務や仕事も増えましたが現状に甘んじることなく新しい事に挑戦することが当たり前の環境に育てられたと思います。現状のやり方を踏襲して忙しい忙しいと言っているだけでは会社の進歩・発展も社員の成長もありません。改革し、生産性を上げ、新しい事に挑戦することが当たり前の職場環境にすることが活気溢れる職場づくりに欠かせません

3つ目に人事制度、働く人にやさしい制度設計、人を育てる組織が必要です。もちろん会社に余裕がなく週休2日制の導入がまだまだ難しいのに社員重視の経営をしなくては人が集まらないと導入することはお薦め出来ません。実力を備えてから導入すべきでしょう。人事制度で大事なことは役割を担い成果を出し能力のある人に昇進・昇格のチャンスを作ること。影日向なくコツコツ働いて役割を担ってくれている人に報いること、そして公平・公正な評価が出来るように工夫することです。もう1つは30年以上前の年功序列制度の古い賃金制度のまま運用している会社がまだまだ多いと思います。役割主義人事制度へ転換・見直すべきでしょう。そして上司が社員一人ひとりの可能性を見出し「任せてやらせてみる」人を育てる職場にすることです。連合艦隊司令長官山本五十六の名言「やってみせ、言って聞かせてさせてみて、褒めてやらねば人は動かじ」という努力を全職場で実践することです。一説によると70%の上司、幹部は現業に追われ人を育てていないと言われています。幹部から意識改革が必要です。