NO38 やり遂げない風土

2017年2月3日

 

  2月1日の日本経済新聞「私の履歴書」に昭和電工元社長の大橋光男氏の記事の一文に目が止

まりました。それは記事の冒頭、社長就任内定記者会見で「年間売上高に近い7000億円の

有利子負債を抱えている」「当社はぬるま湯につかっている。危機感がない」と率直に語り社

風の刷新に鬼になると公言されたくだりがあったのです。

実は経営とは経営理論では簡単に推し量れない社風や風土、習慣や慣行というものがあり、そこ

が経営を進める上で大きな障害になっている場合はそこに手を打たない限り会社は良くならない

と思っていたので思わず相槌を打った次第です。

過去、勤務する会社でも何十年も前から標準部品委員会というのがあって、技術者にとって何万

点の部品がコンピューターでQCDなど情報が揃い便利に使われていると思っていましたら、まっ

たくそうではなく機能していない事が分かって衝撃を受けたことがあります。通常メーカーの場合

は開発部門、設計部門にとって、こうしたインフラが整備されていなかったら、技術者が個々に情

報を集めて仕事をすれば、膨大なムダな工数を費やすことになります。こんなことも時々の課題や

問題として技術部門で取り上げられているにも関わらず長い間放置されていたのです。

担当者や担当の部長クラスの答えは「担当をつけてやってはいるのですが、他部門の〇〇がやって

くれなくて」と他責の答えが返ってくるばかりでした。結局「なんとかやり遂げよう」との方針を、

確認し2度、3度の挫折、失敗を経て完成してくれたことがあります。その時つくづく思ったことは、

「当たり前に出来ていると思っていることでも、当事者がやらされ感で仕事をしている場合、また中

心になる管理者が本気にならなければ悪しき習慣が蔓延して結果を出せない「ぬるま湯につかった状態」

というのが十分に起こりうるということです。

もう1つは大手顧客の大型物件が特殊仕様ゆえにいつも赤字に悩まされていたことです。

担当者は「一生懸命やってはいたんですが」という答え、担当の部長も「今後は何とか」とうこと

で、しかしいつも同じような結果を繰り返していました。赤字幅は1件で数千万円単位。将来のた

め、あえて赤字でも開発投資案件として捉える場合を除き、それを許していたら経営は成り立

ちません。結局、競争もある、顧客の要望もある、しかし「断じて黒字にして儲けるようにしよう」

ということで、その後、生・販・技が「縦割り組織の弊害」を乗り越えて真剣に見積もり段階からプロ

ジェクトを組んで取り組み、いろんな提案が顧客に受け入れられて大幅に改善できるようになったのです。

力を合わせればできたのです。会社経営をやる以上「やり遂げる風土」を醸成したいものです。