日経ビジネス(雑誌2020,4,20号)に目を引く記事がありました。「賢人の警鐘」というコラムで日本を代表する経営者や賢人が交代でその時々にかなったテーマで寄稿するものです。今回は「危機感は、経営者が人為的に生み出すもの、社長が人気者なら病気だ」というサブタイトルがついています。
寄稿者はミスミグループのシニアチェアマンで前職はボストン・コンサルティンググループでコンサルタントをされていた三枝匡さんです
(著書「V字回復の経営」で有名)
・会社の「危機」と、社員の抱く「危機感」は相関しない。むしろ逆相関と言った方がいい。
業績が悪ければ危機を感じるはずだが、低い業績の会社ほど、たるんだ雰囲気であるこ
とが多い。逆に成長企業で業績が良くて危機には見えないのに、社員がピリピリしてい
て、頑張り屋が多い。
・この逆相関が起きる理由は社員の反応にある。成長企業の社員は会社の外に敏感である。
「競争相手」の動き、「顧客」の変化、世界の「技術動向」などで、競争に遅れたこと
を察知すると、社員は「まずい」「何とかしなければ」と考える。一方、業績が低迷し
組織が澱(よど)んでいる会社では、社員の多くが「内向き」の論理で動く。市場での
勝ち負けや顧客の声には概して鈍感で競合の後追いで満足する。
・事業再生に成功した会社では必ず改革のリーダーが現れる。古くはNTTに乗り込んだ
真藤恒氏、GEのジャック・ウェルチ氏、経営破綻した日本航空を2年で救った稲盛和
夫氏など、事業再生は2年で成功宣言を出せるスピードで進めていくことが肝要だ。2
年で変われない会社は10年たっても変われない
・経営者はよく計算された「戦略的アプローチ」と「具体的アクション」の切り込み方を
用意し、その上でトップ自らが矢面に立つ覚悟で既成の組織と既成の価値観を突き崩し
ていかなければ、改革の成果を引き出すことは難しい。問題の核心に切り込んでいくトッ
プは好かれることはまれで、それがトップの宿命だ。