「ダイバーシティ経営を実現するために必要な4つの取り組み」と題して中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)佐藤博樹教授の
寄稿記事を読み今の時期、当を得たものと思い紹介します。(出典:大阪府経営合理化協会会報NO543号2020,4,1発行)
・ダイバーシティ経営に取り組む企業が増えている。その背景には「日本人男性、フルタイム勤務、時間・転勤制約なし」といった、従来「適材」
と考えられてきた人材の確保が質・量両面で難しくなったことがある。
・ダイバーシティ経営の基本は従来の人材活用と同じ「適材適所」に変わりはないが多様な人材というと性別、国籍といった属性の多様化を誤解する
人が多いが、より大事なのは「多様な価値観を持つ人が働き」なおかつ「その人たちが活躍していく仕組みを整備していく」ことにある。
具体的には次の4つが大事である
・第1は働き方改革である。多くの企業では、フルタイムで働き残業もできることが標準的な社員の働き方になっている。しかし多様な人材が
活躍できるようにするためには、仕事と介護や子育てとの両立の課題があり従来の働き方が難しい社員などにも責任ある仕事を任せられる働
方への改革が必要になる。このためには長時間労働を評価する職場風土の変革が必要で、時間意識の高い働き方への転換が求められる。
・第2は多様な価値観を持つ人を受け入れながら、組織としての求心力を維持することである。そのため、組織としての求心力として経営理念
の浸透、定着が重要になる。
・第3に人事管理システムの改革である。従来は同質的な人材像を前提とした会社主導のキャリア管理がなされてきた。しかし共働きの社員が増
えたり、仕事と子育てや介護の課題を抱えたりする社員が増えることを考えると、この点の改革が必要となる。
・第4に多様な部下をマネジメントできる管理職の育成と登用が重要になる。管理職の部下マネジメントの基本は①部下が担うべき役割を理解する
こと(役割理解支援)②期待された役割を実現するために必要な職業能力を部下が保有できるようにすること(能力開発支援)③部下が仕事意欲
を高い水準で持続すること(仕事意欲維持向上)である。特に管理職には部下や周りの人の意見や考えを聞き出せる「傾聴するコミュニケーション
能力」が求められる。