NO75 苦境の日産

2020年6月3日

 日産自動車がカルロス・ゴーン元社長の下、「リバイバルプラン」で復活して約20年。再び経営危機の淵に立たされています。2020年3月期の連結最終損益は6712億円の赤字(前の期は3191億円黒字)に転落しているのです。

新しい中期経営計画では生産能力の2割削減を打ち出しています(サバイバルプラン:5月28日当面スペイン工場の閉鎖や車種削減を柱にした再建計画を発表している

元々販売は500万台を割るような状態、しかし生産能力は700万台 こうした余剰生産能力を保有したままでは利益は出せません。これは2012年3月期から6年間の中期経営計画「日産パワー88」の失敗と言わざるを得ません。世界販売シェアー8%、売上高営業利益率8%という規模と収益の両立を狙ったものでしたが規模拡大ができず収益向上が出来なかったのでしょう。その原因と課題は次のようなものです。

  1. 長期的視点の欠如が挙げられる。インド、ロシア、インドネシア等新興国での販売拡大を上げていたが商品開発や販売網構築が鈍るようになった。はじめは新興国でのブランドを支える土台にダットサンやインフィニティ―のEV化などの開発を強化するはずだったが実現できず販売店に十分な武器を与えられなかったことだ。
  2. 過度に短期収益を追求 最たる例が米国販売の瓦解。販売奨励金と大口の法人向けに頼った販売は目先の販売台数は稼げるが収益性とブランドを傷つけてしまった
  3. 経営責任が曖昧 ゴーンショック(2018年11月電撃逮捕)以来日産の経営やルノーとのアライアンスは混乱を極めた。また日産の経営幹部は米国の値引き販売の弊害から目を背けて事態を悪化させたが、責任の所在は曖昧のままであった。

ゴーン氏が去ると、軸を失った日産は混乱。身内同士で足を引っ張り合う異例の事態に陥った。「すべてをゴーン任せにして短期志向で主体的に経営をしてこなかったツケが一気に出た」という意見が出るほどです。(参考:日経産業新聞2020年5月29日号)

この事例では経営は短期志向だけではだめで長期志向を併せ持つ事の大事さを教えています。