NO 82 ソニーとパナソニック

2021年1月30日

 新型コロナウイルス禍に明け暮れた2020年は多くの企業の明暗を分けましたが、日本における代表例

が20世紀の家電の両雄、ソニーとパナソニックです。(参照記事:日本経済新聞2020,12,30・31日から)

「明」のソニーは業績好調。コロナ禍による「巣ごもり消費」が追い風になってゲームや音楽などが成長し

21年3月期の売上8兆5000億円、最終利益は前期比37%増の8千億円を見込んでいます。

一方「暗」のパナソニックは長引く低迷から抜け出せていません。21年3月期の売上6兆5000億円、

最終利益は前期比56%減の1千億円とも予想されています。

コロナ禍で鮮明になった両者の明暗。その要因は事業構成のトランスフォーメーション(転換・変換)を

着実に進めたソニーに対してパナソニックは事業モデルの刷新に立ち遅れたと言われています。

5年前までエレクトロニクス産業を論じる際に「スマイルカーブ」の例えがよく使われました。

両端が上がり真ん中の下がったスマイルカーブと同じく、電機産業のサプライチェーンにおいて

川上の部品や素材、川下のメンテナンスやサービスの収益性は高いが中間の組

み立て、製造プロセスはコモディティー化が進み、あまり儲からないという指摘です。

この構図に沿ってソニーのポートフォリオを分析

すると、「かって主力だったテレビやビデオといった組み立て型事業の比率が下がり、逆にゲームや

音楽、映画などのサービス系とイメージセンサーの部品ビジネスの構成比が高まっています。過去四半世紀に

わたって絶え間なく事業の取捨選択を進め、スマイルカーブの両端のビジネスに会社の軸足をシフトしていま

す」一方で「パナソニックは赤字になると、シャカリキになってリストラしますが、危機が終わると組織全体

が緩んで変革が中途半端に終わるというパターンを繰り返してきたようにみえる。やはり新生パナソニックは

なお広い事業領域を大胆に絞り込み、強みを持つ分野に人やカネを集中できる体制づくりを急ぐべきだろう」

と指摘しています。企業の健全な成長、発展には事業モデルの見直しや刷新は必要不可欠です。これには事業

の長期的視点に立った決断、それに従って年度毎の果敢な経営の取り組みが必要です。想定が外れ成功できな

ければ傷の浅いうちに再び舵を切って再チャレンジしていけばいいのです。パナソニックの復活を願います。