中国には仕事の関係でこの40年で20回以上訪れています。ほとんどが上海、広州でしたが別途、旅行で杭州、西安に訪れたことがあります。私が接触した中国の人々は、それぞれ優秀で主張すべきことは主張しますし仕事もできる、日本に対して敬愛の念を持っていました。しかし初訪問の時、街はずれや商店街を見てみると日本の戦後の様で「汚い」「不衛生」人々の生活状態は豊かとは言えない状況だったと思います。また仕事のレベルは古いやり方のまま前近代的で日本に比べて30年、50年遅れているなと思いました。しかし中国は79年の国交正常化以降、現代中国の父と呼ばれる鄧小平や周恩来の登場によって「韜光養晦(とうこうようかい:能力を隠して力を蓄える)」「経済改革・開放路線」を推し進めます。そして89年の天安門事件を乗り越えて、この40年欧米、日本に学んで驚異的な発展を遂げました。GDP世界2位の大国です。
1971年、キッシンジャー大統領補佐官が極秘訪中して半世紀を迎えます。ここで米国がとり続けてきた中国との一定の関係を維持しながら変化を促す「関与政策」が終わろうとしています。そこで米中2人の識者の今後
についての意見を取り上げたいと思います。(参考:日本経済新聞夕刊2021,8,20日「政界Zoom」脱キッシンジャー路線、米中識者に聞く)
<対中政策を米政府や議会に助言している弁護士ゴードン・チャン氏>
・米国は中国共産党政権の本質を見誤った。国際秩序に組み入れれば共産主義体制も良好なものになるという
認識を持ち続けてきた。実際には関与政策は失敗に終わり中国の危険性が一段と増しただけだった。
・旧ソ連が崩壊した1991年頃に政策変更すべきだった。民主主義と共産主義の戦いはゼロサムゲームだ
(誰かの得点(利益)が同じ分だけ誰かの失点(損失)となる。その総和(=サム)が常にゼロである)
もはや米国は中国に関与すべきではない
・貿易、投資、技術協力などを含めて関係を断ち切るべきだ。彼らは米中の接触を不当に利用し、私たちを打
ち負かそうとしている
・中国は知的財産権の窃取や略奪的な貿易によって米国や日本から富と成長力を奪っている。その意味で世界
経済のエンジンではなく、むしろ障害物と言える。これまでの優柔不断な対中政策が今のような危険な状態
を作り出した。リスクを伴わない政策はもはやなくなった。その中で最善を探るべきだ。
<米国と中日関係に詳しい上海外国語大学廉トクカイ教授>
・米国が中国と一定の関係を維持しながら経済発展や民主化を促すキッシンジャーの対中政策に戻ることは
もうないだろう。両国は協力と競争が同居する新しい関係になった。キッシンジャー氏の関与政策の背景に
は米ソ関係があった。
・長い間、米国にとって中国がソ連以上の脅威になることはなかった。状況が変わったのは最近だ。中国の経
済力は世界第2位になり米国の背中を捉えている。おそらく10年以内に追い越すだろう。軍事技術も急速
に進歩した。北東アジアでは米国と互角以上の実力を備えつつある。
・中国が主張するのは「新型大国関係」だ。米国に取って代わるつもりはなく大国同士でウィンウィンの関係
を築きたい。この考えが米国でなかなか理解されない。米国が中日関係を引き離そうとしており、残念なが
ら政治上の理由から協力が進まない。
「日本は地理的に近い中国と経済関係を断つのは現実的ではなく、不要な対立を避ける必要がある。日本外交は米中対立の狭間で隘路(狭くと通りにくい道)を探るしかない」と新聞では締めくくっています。