IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)が2021年8月9日に第6次報告者を発表しました。
それによると産業革命(1760~1830年)前と比べた世界の気温上昇が2021~40年に1,5度に達するとの予測を公表したのです。(参考:日本経済新聞2021,8,10日)
温暖化は前回発表した2018年の想定より10年ほど早くなるとのことです。そしてもう一つ今回は『人間の活動の温暖化への影響は「疑う余地がない」と断定した』ことです。自然災害を増やす温暖化を抑えるには二酸化炭素(CO2)排出を実質ゼロにする必要があると指摘しています。
確かに世界人口は1世紀頃から産業革命ぐらいまでは数億人であったものが1950年には25億人、2017年には75億人と爆発的に増えています。2050年には97億人とも言われています
産業革命前は半世紀に1回だった猛暑は1,5度の上昇で9倍、2度で14倍に増えると予測されています。強烈な熱帯低気圧の発生率も上がり干ばつも深刻になり、平均海面水位は直近120年で0,2メートル上がっているとのことです。気候変動のリスクを正面から受け止め、対策を急ぐ必要があることは言うまでもありません。
IPCC第6次評価報告書から平均気温が上昇すると異常気象が増える
温度上昇 | 1度(現在) | 1,5度の場合 | 2度の場合 | |
熱波など極端な高温 | 気温 発生率 | +1,2度 4,8倍 | +2度 8,6倍 | +2,7度 13,9倍 |
極端な大雨 | 雨量 発生率 | +6,7% 1,3倍 | +10,5% 1,5倍 | +14% 1,7倍 |
農業に被害を及ぼす干ばつ | 発生率 | 1,7倍 | 2倍 | 2,4倍 |
2100年までの海面上昇(1995~2014年比) | 高さ | ― | 0,28~0,55 メートル | 0,32~0,62 メートル |
21世紀に入り、新興国や途上国の経済成長に合わせ温暖化ガスの排出は急増しています。気温はこれまで約1度上昇しています。顕著な影響は山火事です。20年に大きな被害が出た米カルフォルニア州のほかロシアやカナダ、トルコ南西部でも相次ぎ、北極圏は他の地域の2倍超のペースで温暖化が進み、気温が1,5度上がった場合、海面上昇や台風で世界の1億4千万人が浸水などの被害を受けると予測しています。
IPCCは化石燃料の削減など抜本的な対策を取らない場合、気温は今世紀末に最大5,7度も上昇すると試算しています。影響はさらに深刻になりかねません。
報告書では「次の10年が決定的に重要だ」と声明を発表しています。今世紀半ばに温暖化ガスの排出を実質ゼロにするために、石炭火力発電の廃止や電気自動車への移行の加速が不可欠との見方を示しています。
政府は8月4日、30年度に温室効果ガス排出量を13年度比46%削減する目標達成をめざし計画案を示しました。2013年の温室効果ガスの排出量(実績)は14億800万トン、それを30年には7億6000万トンに46%削減する目標です。
政府は具体的には工場などの産業部門は1億7300万トン(37%)オフィスなど業務部門は1億1800万トン削る。家庭部門は1億3800万トン(66%)の大幅な圧縮を見込んでいます。CO2排出量の7割が電力由来であることから、計画案では省エネ家電への買い換えやLEDへの取り替え、断熱効果の高い建材による住宅改修、屋根に設置する太陽光発電、高効率給湯器の導入促進などをあげています。発電所を含むエネルギー転換部門では再生可能エネルギーを現在の2倍に増やすなどして発電由来のCO2を抑える方針を示しています。
温暖化リスクは待ったなしのところまで来ています。それぞれの立場で温暖化を食い止める取り組みが必要です。