2021年8月9日号から4週にわたって日経ビジネスに「顧客起点の経営改革」という特集が組まれました。
この記事はロート製薬やP&Gの「パンパース」などで手腕を発揮され数々のブランドや事業をヒットさせてきたマーケティングコンサルタントである西口一希さんによるものです。ロート製薬ではスキンケアブランド「肌ラボ」を担当し、売上を8倍に伸ばされたそうです。「顧客起点の経営改革」の要点をあげます。
・経営者が「思うようにうまくいかない」事態において共通するのは、意思決定の土台となるべき「顧客
理解が弱い」ことだ。
・既存顧客も、潜在顧客もすべて数字として平均化、最大公約数化して捉えている以上新規顧客の獲得、
顧客のファン化、あるいは新規の事業創造への具体的アクションは見えてこない
・顧客起点の経営改革のためには、以下のフレームワークの理解と適用が大事である。
顧客起点の経営改革フレームワーク(経営のブラックボックス)
経営対象 | 顧客心理 | 顧客行動 | 財務結果 | ||||||
管理が可能 ・新規顧客獲得への投資 ・既存顧客維持への投資 ・既存顧客育成への投資
・プロダクトの開発、改良 ・上記を実行する組織、人材、 教育、オペレーション文化 | 特定顧客層(WHO)の特定のプロジェクト認知形成(機能・特徴・イメージ)
その顧客層(WHO)の便益、独自性(WHAT)となり購買意向となる |
・新規の流入(+) ・アイテム、単価、頻度 ・定着率(既存顧客化)
・既存の維持・流出(-) ・アイテム、単価、頻度
(BtoB-リード数、商 談数、案件化数、受注数) |
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管理が困難 ・競合や代替品の動き ・社会環境と価値観
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・顧客が見えていないとは、まさに図の左から2つめの「顧客心理」がブラックボックスになっている
ことに他ならない。
・どの企業も右端の「売上-費用=利益」、言い換えると売上最大化と費用の最小化による利益の最大化
を事業成長のために追いかけている。一方、その財務結果を得るために経営が対象にするものが左端の
「経営対象」だ。顧客獲得や維持、育成のための投資、それによるプロダクトの開発から人材育成まで
の組織内での策は管理が可能と言える。
・一方、管理が困難な要素が競合や代替品の動き、また社会環境や価値観の変化だ、これらは管理がで
きないながら費用を左右する。つまり経営が管理する対象への投資は、そのまま「変動費+固定費」に
なるのではなく「管理が困難」な要素の影響によって常に変動する。
・ここで、あるべきプロセスとは①経営が対象とする「新規顧客の獲得」「既存顧客の維持・育成」への
投資が顧客に届き②顧客の心理が変化し③顧客行動が変化し④その結果として投資対効果が最適化され
利益が向上することだ。
・経営が可視化すべきは、顧客心理と顧客行動の関係を可視化し、経営と組織全体に実装できれば、投資
効果を高め、収益性の向上を実現できる。逆に顧客心理と行動の関係が見えないままの投資は、顧客行
の変化をただ“期待”しながら暗闇に投資するようなもので、費用だけが確実に積み上がることになる。
顧客起点の経営改革フレームワークの部分の紹介だけに終わりましたが(表がうまく表示できていませんが)
今までにない価値あるマーケティングのフレームワークだと思います。