2021年7月

NO87 パナソニック

2021年7月27日 火曜日

 パナソニックがいまだ苦しんでいます。私などは松下幸之助さんの講演を聴いたことがある(大阪商工会議所にて:30代の頃)世代で、前職の製品をたくさん買っていただいたお客さんでもありパナソニックに尊敬の念と愛着があります。

2021年3月期は売上高6兆7000億円、純利益は前期比27%減の1650億円にとどまっています。また2000年以降21年間、売上高は8兆円から9兆円で伸び悩み、純利益が赤字の期もあり低迷してきました。

パナソニックは松下通信工業、松下電工や三洋電機などの子会社化や融合などに追われて次の方向を示し切れなかった10年の間に、同じコングロマリットである電機大手は将来への解を打ち出しています。ソニーグループはエンターテイメント、日立製作所はIOTサービス基盤「ルマーダ」を事業の中心に据えています。そして2社とも戦略図にそぐわない事業を切り離すなど構造改革を徹底して業績を改善し21年3月期に純利益が過去最高を更新しています。

津賀一宏前社長は退任を発表した20年11月、「収益を伴う成長ができなかった」と悔しさを口にしています。7000億円を超える最終赤字を抱えた就任直後から思えば「次の挑戦が維持できる形でここまでこれた」と一定程度の責務を果たしたと話される。また津賀一宏氏と同期間、社外取締役であった大田弘子氏(政策研究大学院大学特別教授)はこの9年間の津賀体制の評価について「格闘の9年間だった、製造業の収益構造が大きく変わった。大量生産、大量消費で収益を上げるわけではなくソフトウェアやリカーリング(繰り返す、循環という意味で長期的に継続収益を得ることを目的としたビジネスモデル)で収益を上げる時代だ。誰よりも理解してきたのが津賀氏で転換しようと格闘してきた。事業内容がBtoBに変わり変化する力を持ち始めたという感じだ」「継続性が重視されすぎるところがある。変わる力を持ち始めた今、旧態依然を捨て去ることが重要だ」と指摘されている。

後任を託された楠見雄規新社長は次の成長の柱について「まずは各事業で競争力を徹底的に強化してから」そして「パナソニックが経営の伝統、強さ、らしさを取り戻し大きな貢献を生み出す会社にしていきたい」と話されている。事業別5社と米・中の地域別の2社を加えた7つの社内カンパニー制で再スタートが切って落とされました。22年には持ち株会社制へ移行されます。アナリストからは赤字だった液晶や太陽電池からの撤退について「決断が遅い」と指摘されています。現在のパナソニックの時価総額は3兆円と10年前は2兆円でソニーと並んでいましたが今はソニーが13兆円とその差は4倍に広がっています。(参考:日経産業新聞2021,7,20/同2021,7,29)なんとか各事業を成長軌道にのせて再び強いパナソニックの復活を期待したいものです。