2021年11月4日

NO92 気候危機

2021年11月4日 木曜日

 国連のグテレス事務総長は英国のグラスゴーで10月31日から開催された第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)を前に日本経済新聞に寄稿されました。大変感銘を受けました。主な内容を紹介します。就任宣誓式に臨み、総会に向けて演説を行うアントニオ・グテーレス次期国連事務総長©UN Photo/Eskinder Debebe

(参考:日本経済新聞2021年10月29日、31日、11月2日、4、16日、日経産業新聞11月30日)

 ・気候危機は人類に対する赤信号だ。

 ・警告の兆しはもはや見過ごせないレベルに達している。気温は至るところで過去最高を更新し、生物多様性

  は過去最低の水準に落ち込んでいる。海は水温が上昇し、酸性化が進み、プラスチック廃棄物で窒息死しか

  けている。今世紀末には人類が住めない死の地帯が大幅に増えるだろう。

 ・英医学雑誌ランセットでは気候変動は数年後に「人間の健康を左右する要因」になると指摘した。広い範囲で

  飢餓や呼吸器疾患、大災害、新型コロナウイルスよりもひどい感染症の大流行を引き起こすほどの危機だ。

 ・各国政府が最近、気候変動の新たな目標を表明しているのは歓迎すべきで非常に重要だ。それでも気温

  の上昇幅が2度を上回る悲惨な状態に向かっている。パリ協定で合意した1,5度目標とは雲泥の差が

  ある。科学はこの目標を達成するのが唯一の持続可能な道であることを示している。この目標は十分に

  達成可能だ。今後10年で世界の温暖化ガス排出量を2010年比45%削減し50年までに実質ゼロを

  達成すれば可能になる(現時点では産業革命前から気温は既に1,1度上昇している)

 ・全ての国は、化石燃料を燃やす旧式の開発モデルは自国の経済と地球に対する死刑宣告になると認識する

  必要がある。私たちは今すぐに、あらゆる国のあらゆる部門で脱炭素を進めなくてはならない。補助金を

  化石燃料から再生エネルギーに振り向け、人ではなく汚染に対して課税すべきだ。

 ・経済協力開発機構(OECD)加盟国は30年までに、全ての国は40年までに石炭からの段階的な脱却も進め

  るべきだ。人々が政府の主導を期待するのはもっともだが、私たち全員に人類の未来を守る責任がある。

  企業は気候への影響を軽減しなくてはならない。自社の業務と資金の流れを完全かつ確実に脱炭素の未来に

  足並みをそろえる必要がある。全ての社会の個人は食事や旅行、買い物の際により良い責任ある選択をする 

  べきだ。

 ・全ての国がこの移行を果たせるように支援するため、世界は団結しなくてはならない。先進国は発展途上国

  に気候変動の投融資を年間1000億ドル(11兆3000億円)以上提供するとの約束を至急果たさなく

  てはならない。国連は人類が直面する最大の脅威への対応の合意を形成するために76年前に設立された。

  だが今回のような存亡をかけた真の危機に直面するのは異例だ。進むべき道は1つだ。気温上昇を1,5度に

        抑えることだけが人類にとって存続可能な未来だ。行動を起こさなくてはならない。

今回のCOP26については、地球の気温上昇を産業革命前より1,5度以内に抑える努力目標を実現するには、世界

で10年比で温暖化ガスを45%削減する必要があります(2015年12月パリ協定として196カ国が参加、国際協定として合意)しかし危機感は共有できたものの現状の目標を足し合わせても30年時点で13,7%増となり1,5度目標の達成にはほど遠いもので、達成には30年にかけて中国、インド、ロシアの大幅な排出削減に加え日本や米国の追加努力が欠かせないことがわかりました。COP26での合意内容は①1,5度目標を目指し「努力追求」②石炭火力発電の段階的な削減③途上国への資金支援の拡充(先進国による年1000億ドル)④国際排出枠の取引ルールの4項目です。アントニオ・グテレス事務総長は「前進のための基礎を手に入れた」と述べています。産業革命前からの気温上昇は1,5度以内に抑える努力を追求すると明記され、足並みをそろえた意味は大きいと思います。