2020年4月

NO72 ダイバーシティ経営

2020年4月24日 金曜日

 「ダイバーシティ経営を実現するために必要な4つの取り組み」と題して中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)佐藤博樹教授の

寄稿記事を読み今の時期、当を得たものと思い紹介します。(出典:大阪府経営合理化協会会報NO543号2020,4,1発行)

・ダイバーシティ経営に取り組む企業が増えている。その背景には「日本人男性、フルタイム勤務、時間・転勤制約なし」といった、従来「適材」

 と考えられてきた人材の確保が質・量両面で難しくなったことがある。

・ダイバーシティ経営の基本は従来の人材活用と同じ「適材適所」に変わりはないが多様な人材というと性別、国籍といった属性の多様化を誤解する

 人が多いが、より大事なのは「多様な価値観を持つ人が働き」なおかつ「その人たちが活躍していく仕組みを整備していく」ことにある。

 具体的には次の4つが大事である

・第1は働き方改革である。多くの企業では、フルタイムで働き残業もできることが標準的な社員の働き方になっている。しかし多様な人材が

 活躍できるようにするためには、仕事と介護や子育てとの両立の課題があり従来の働き方が難しい社員などにも責任ある仕事を任せられる働

 方への改革が必要になる。このためには長時間労働を評価する職場風土の変革が必要で、時間意識の高い働き方への転換が求められる。

・第2は多様な価値観を持つ人を受け入れながら、組織としての求心力を維持することである。そのため、組織としての求心力として経営理念

 の浸透、定着が重要になる。

・第3に人事管理システムの改革である。従来は同質的な人材像を前提とした会社主導のキャリア管理がなされてきた。しかし共働きの社員が増

 えたり、仕事と子育てや介護の課題を抱えたりする社員が増えることを考えると、この点の改革が必要となる。

・第4に多様な部下をマネジメントできる管理職の育成と登用が重要になる。管理職の部下マネジメントの基本は①部下が担うべき役割を理解する

 こと(役割理解支援)②期待された役割を実現するために必要な職業能力を部下が保有できるようにすること(能力開発支援)③部下が仕事意欲

 を高い水準で持続すること(仕事意欲維持向上)である。特に管理職には部下や周りの人の意見や考えを聞き出せる「傾聴するコミュニケーション

 能力」が求められる。

 

NO71 危機感

2020年4月19日 日曜日

 日経ビジネス(雑誌2020,4,20号)に目を引く記事がありました。「賢人の警鐘」というコラムで日本を代表する経営者や賢人が交代でその時々にかなったテーマで寄稿するものです。今回は「危機感は、経営者が人為的に生み出すもの、社長が人気者なら病気だ」というサブタイトルがついています。

寄稿者はミスミグループのシニアチェアマンで前職はボストン・コンサルティンググループでコンサルタントをされていた三枝匡さんです

(著書「V字回復の経営」で有名)

・会社の「危機」と、社員の抱く「危機感」は相関しない。むしろ逆相関と言った方がいい。

 業績が悪ければ危機を感じるはずだが、低い業績の会社ほど、たるんだ雰囲気であるこ

 とが多い。逆に成長企業で業績が良くて危機には見えないのに、社員がピリピリしてい

 て、頑張り屋が多い。

・この逆相関が起きる理由は社員の反応にある。成長企業の社員は会社の外に敏感である。

 「競争相手」の動き、「顧客」の変化、世界の「技術動向」などで、競争に遅れたこと

 を察知すると、社員は「まずい」「何とかしなければ」と考える。一方、業績が低迷し

 組織が澱(よど)んでいる会社では、社員の多くが「内向き」の論理で動く。市場での

 勝ち負けや顧客の声には概して鈍感で競合の後追いで満足する。

・事業再生に成功した会社では必ず改革のリーダーが現れる。古くはNTTに乗り込んだ

 真藤恒氏、GEのジャック・ウェルチ氏、経営破綻した日本航空を2年で救った稲盛和

 夫氏など、事業再生は2年で成功宣言を出せるスピードで進めていくことが肝要だ。2

 年で変われない会社は10年たっても変われない

・経営者はよく計算された「戦略的アプローチ」と「具体的アクション」の切り込み方を

 用意し、その上でトップ自らが矢面に立つ覚悟で既成の組織と既成の価値観を突き崩し

 ていかなければ、改革の成果を引き出すことは難しい。問題の核心に切り込んでいくトッ

 プは好かれることはまれで、それがトップの宿命だ。