2020年

NO80 しぶとい会社

2020年11月8日 日曜日

 幾度もピンチをくぐり抜け、それを糧に成長を続ける企業がある。一方で、たった一度の危機で衰退を始める会社も少なくない。

両者の差は危機を好機に変える「4つの技術」の有無にあるという(日経ビジネス2020、10,26日号参照)

 1 動揺を防ぐために「遠大な視野を持つ」

   「ピンチをチャンスに変える」とはどういうことかと言えば“危機に直面することで、平時では現れない組織の潜在能力を

   顕在化させ、危機以前よりも強い状態になる”ことだ。組織であれ個人であれ、これを実践する大前提となるのが「ピンチ

   でパニック状態にならないこと」(脳科学者の岩崎一郎氏:ピンチになれば視野が狭まる)組織が動揺すれば危機を好機

   に変えるどころではなくなる。これを防ぐ有効な方法が「長期的な視野に立つこと」「最悪の事態を想定する」「逆算し

   て行動を決める」簡単な例で言えば、リーマン・ショック級の市場暴落が起きても「人類の経済は、曲折を経ながらも、

   拡大し続ける」との長期的視点を持つ投資家は狼狽(ろうばい)売りをしない。企業経営も同様で「目の前の危機が遠大

   な目標にたどり着く過程の曲折の一つ」と経営陣や社員が信じている会社は、ピンチに動じることはない。

2 反発力を高めるために「社員の自己肯定感」

   ピンチをチャンスに変えるため、次に必要になるのが社員の自信だ。劣勢を覆し、しぶとく攻撃にまでつなげるには当然、

   普段は使わない強い反発力が必要になる。そのベースとなるのは「自分たちはできる」という現場の自信以外にない。

   それには「自社の強み・弱みを具体的に何なのかを再認識する」「ミッションを明確にする」「自信を持つ」ことと

  「危機感の共有」が大事になる。

3 苦境を打開するための「他者を巻き込む風土」

   危機的状況で火事場のばか力を発揮するには、社員一人ひとりの自信に加え、団結力も欠かせない。ピンチは誰にでも、

   どんな起業家にも訪れる。それを乗り越えるためにもビジョンやミッションへの賛同者をどれだけ増やせるかが重要と

   なる。「抱え込まず、周囲と連携する」「外向きの目を大切にする」「危機感、すべきことを共有する」そして現場が

   自律的に会社を動かすことが大事。

4 スピード感を育むための「現場優先の意思決定」

   危機を好機に変えるためには、もう1つ、必要な要素はスピードだ。もちろんお互いを信頼し合うことも大事。ピンチで何も

   しなければ経営状態はますます悪化する。一刻も早い経営判断が必要で、そのために有効なのが現場優先の意思決定をすることだ。

NO 79 SFA/CRM導入

2020年9月2日 水曜日

 SFAはSales Force Automation(セールス・フォース・オートメ―ション)の略で営業支援システムと呼ばれます。CRMは Customer Relationship Management (カスタマーリレイションシップ・マネジメント)の略で顧客管理システムと呼ばれます。

3年ほど前から、お客様のIT化の主要なシステム&ツールとして有効だと考え導入に向けてお客様と勉強会や検討会を重ねてきました。また3回ほど日本

経済新聞社主催のSFA/CRM関連のセミナーに参加、導入企業が増えていることを実感しました。

SFAは営業担当者個人に留まりがちな既存顧客や見込顧客の情報を記録・一元管理することで案件の履歴や進捗の共有・分析が可能となり、営業活動の

属人性を減らし組織として効率的な営業業務に変換することが可能となります。 セールスマンの管理が目的ではなく顧客管理と案件管理を目的に効率的

な営業の推進、営業の質の向上、人材育成に役立ちますので一定規模以上の企業は是非導入を検討し進めて下さい。

   ・顧客管理・・・売れる可能性の高い顧客の優先順位付けと囲い込み(CRM)

   ・案件管理・・・引合いを頂いた見込案件の受注見込み時期、受注確度、商談進度

   ・訪問管理・・・顧客ランク、商談進度に応じた訪問頻度の確保

CRMは、主に情報システムを用いて顧客の属性や接触履歴を記録・管理し、それぞれの顧客に応じたきめ細かい対応を行うことで長期的な良好な関係を

築き、顧客満足度を向上させる取り組みです。それぞれの業界の1位、2位の会社がこれらのシステムを導入しているなら、3位以下の会社が旧来の方法

だけでは、いずれ遅れを取るだけです。業界をリードするためにも受け身ではなく、主体的にSFA/CRMを自社の中に導入・定着させ顧客管理と案件管理が

うまく運用出来るように進めて下さい。

 

 

NO 78 読書

2020年8月25日 火曜日

 この5か月、コロナ禍、仕事で出かける以外は家にいることが多く、大半を読書三昧で過ごしていました。40冊くらいは読んだと思います。日頃はビジネス書を中心に仕事関連の本を読んでいるのですが今回はチョット違った分野の本を読んでみました。

主に読んだのは歴史小説で葉室麟の作品です。葉室麟の作品を読むのは司馬遼太郎以来今回が初めてでしたが歴史文学賞を受賞したデビュー作「乾山晩愁」を読み、その面白さに引き込まれ「銀漢の賦」(松本清張賞受賞)「いのちなりけり」「蜩の記」(直木賞受賞)「鬼神の如く 黒田叛臣伝」(司馬遼太郎賞受賞)「あおなり道場始末」など16冊をあっという間に読みました。また10年ほど前から一度は読みたいと思っていたベストセラーとなった加藤廣の「信長の棺 上・下巻」も読みました。いずれも司馬作品に劣らず歴史小説にふさわしい内容と読み応えのある圧巻の作品でした。お2人は既に2~3年前に亡くなられていますがファンになりました。その他朝井まかての作品「阿蘭陀西鶴」(織田作之助賞受賞)「すかたん」(大阪ほんま本大賞受賞)「雲上雲下」(中央公論文芸賞受賞)「悪玉伝」(司馬遼太郎賞受賞)「恋歌」(直木賞受賞)「落花狼藉」など8冊を読みました。また永井沙耶子の作品「商う狼」「狼」と恐れられた実在の江戸の風雲児の生涯の物語などいずれも力作です。そして加来耕三の「歴史の失敗学 25人の英雄に学ぶ教訓」戦国時代の名将、傑物の知られざる真実に迫っており読み応えがありました。堺屋太一の「豊臣秀長 ある補佐役の生涯」菅官房長官の愛読書と言われるだけあって丹念にその生涯を描いています。次に読んだのが医学ミステリーの分野の帚木蓬生(ははきぎほうせい)の本を3冊読みました。「白い夏の墓標」「三たびの海峡」「閉鎖病棟」です。「閉鎖病棟」は映画化されており涙なしでは読めない読み応えのある作品です。いずれの方々も時代を代表する作家ですね。

またこの人の本を読みたいと思っていたのが立命館大学APUの学長、出口治明さんです。「ゼロから学ぶ日本史講義 古代編・中世編」「全世界史 上・下」「還暦からの底力」結構読むのに時間がかかりましたが読みやすく全体を理解するのに大変勉強になりました。今後出口さんの本は全部読みたいと思っています。もう1人読みたいと思っていた人が元外交官だった佐藤優さんです。「人類の選択」そして安部龍太郎との対談「対決!日本史」も大変読み応えがありました、この8月最後に読んだのが伝説の投資家と言われるジム・ロジャーズの「危機の時代」です。世界同時不況がまもなく起こるとを予測しています。今回はビジネス書から離れて興味のある歴史小説や出口さんや佐藤さんの本を読めて満足感があります。

NO77 アマゾン撃退法Ⅱ

2020年8月11日 火曜日

 米ウォルマートの業績が好調です。2020年2~4月期の決算増収増益を達成しました。売上は全米5000店舗、14兆5000億円、伸びは9%、

過去で20年で最大だそうです。純利益も4%増を記録しました。オムニチャンネル戦略に基づく売上高も74%増加しています。

「金食い虫」とやゆされても、オムニチャンネル戦略への投資を続けてきた成果が表われたと言われています。オムニチャンネルとはオンラインでの販売

と店舗での受け取りを組み合わせた統合型の販売形態のことです。好業績達成の背景には次のことが言えます

・もともとコストを抑えるノウハウが大きい

・コロナ感染症が広がる中、その対応のため23万5000人の臨時従業員を採用、約1000億円を計上、さらに賃金の割り増し、

 従業員へのボーナスなどが負担となっている

・オンライン注文に対応するため宅配サービスを2500店舗に広げ、4月には注文から 2時間以内に商品を届ける速配サービスを

 1000店舗に展開している。またドライブスルー型式の受取所でピックアップすることもできる。

ウォルマートのこれまでのEC・ITへの投資総額は1兆6000億円に上っています。

ある調査によると、全米で全ての年齢層の消費者が今後、従来型の店舗で今より買い物をしなくなるとし、オンラインサービスしか提供しない店での

買い物を減らすと考えている。

彼らが今後利用を増やすのは実店舗とオンラインサービスを融合する小売業者だそうだ。まさにウォルマートのような企業なのです。

(参考:日経ビジネス2020、6,1号)

NO76 ウォーキング

2020年7月31日 金曜日

 ウォーキングを始めて10年目くらいになります。

雨が降ろうが炎天下であろうと(日傘をさします)ほぼ毎日続けています。40~50分4~5kmくらいです。仕事の時は大阪市内が大半ですから

電車を利用して移動でそれなりに歩きますからそれで済ましています。ゴルフは土日、月に何度か(7、8月1,2月は休みます)カートに乗りますが

プレーで6Km近くは歩きます。ゴルフはたいしてうまくなくても歩けるのがいいです。それに一緒にゴルフをする仲間がいることがうれしいですね。

この2つが私の趣味で楽しんでやっています。その他、読書と水彩画、ガーデニングが趣味です。仕事が出来ることも感謝です。

住んでいるところも10分も歩けば田畑が道沿いにあり季節の変化や草花や鳥の飛んでいるのを見て楽しんでいます。

きっかけは10年前にゴルフでご一緒させていただいた5~10歳上の方から「野路井さん、毎日歩かないといけませんよ!」「私は10年前に大腸がん

等、2回の大病をして医者から車通勤していたらダメですよ、歩かないと!と言われたのです」「それから車通勤をやめ電車通勤に変え1駅手前で降りて

毎日1時間は歩くようにして健康になりました」という話しをお聞きしウォーキングを始めるキッカケになったのです。

「歩くとなぜいいか?」(PHP文庫)という本で著者の大島清さん(京都大学名誉教授、脳科学者)が次のようにおしゃっています。

 ・歩くと楽しい、楽しく歩くことでダイエット効果が得られ精神の明るさを取り戻し食欲が増して食事が楽しくなるし心の風景が

  豊かになる。また気持ちが強くなる。

 ・歩くと脂肪がよく燃えて痩せられる

 ・歩くと血管年齢がグングン若くなる

 ・歩けば歩くほど「心臓病」から遠ざかる

 ・歩くと「生活習慣病」の予防になるし「ガン」の予防にも期待できる

 ・歩くと「骨」が丈夫になる

 ・歩く人は、よく眠れる

 ・歩く人は「カゼ」をひかなくなる

 ・歩く人は脳が刺激され「ボケ防止」になる

 ・ウォーキングの基本は、無理なく元気に歩き続けること

ウォーキングは健康のためにも永く続けたいですね。

 

NO75 苦境の日産

2020年6月3日 水曜日

 日産自動車がカルロス・ゴーン元社長の下、「リバイバルプラン」で復活して約20年。再び経営危機の淵に立たされています。2020年3月期の連結最終損益は6712億円の赤字(前の期は3191億円黒字)に転落しているのです。

新しい中期経営計画では生産能力の2割削減を打ち出しています(サバイバルプラン:5月28日当面スペイン工場の閉鎖や車種削減を柱にした再建計画を発表している

元々販売は500万台を割るような状態、しかし生産能力は700万台 こうした余剰生産能力を保有したままでは利益は出せません。これは2012年3月期から6年間の中期経営計画「日産パワー88」の失敗と言わざるを得ません。世界販売シェアー8%、売上高営業利益率8%という規模と収益の両立を狙ったものでしたが規模拡大ができず収益向上が出来なかったのでしょう。その原因と課題は次のようなものです。

  1. 長期的視点の欠如が挙げられる。インド、ロシア、インドネシア等新興国での販売拡大を上げていたが商品開発や販売網構築が鈍るようになった。はじめは新興国でのブランドを支える土台にダットサンやインフィニティ―のEV化などの開発を強化するはずだったが実現できず販売店に十分な武器を与えられなかったことだ。
  2. 過度に短期収益を追求 最たる例が米国販売の瓦解。販売奨励金と大口の法人向けに頼った販売は目先の販売台数は稼げるが収益性とブランドを傷つけてしまった
  3. 経営責任が曖昧 ゴーンショック(2018年11月電撃逮捕)以来日産の経営やルノーとのアライアンスは混乱を極めた。また日産の経営幹部は米国の値引き販売の弊害から目を背けて事態を悪化させたが、責任の所在は曖昧のままであった。

ゴーン氏が去ると、軸を失った日産は混乱。身内同士で足を引っ張り合う異例の事態に陥った。「すべてをゴーン任せにして短期志向で主体的に経営をしてこなかったツケが一気に出た」という意見が出るほどです。(参考:日経産業新聞2020年5月29日号)

この事例では経営は短期志向だけではだめで長期志向を併せ持つ事の大事さを教えています。

NO74 アマゾン撃退法

2020年5月23日 土曜日

 世界最大の小売企業、全米に4700店舗を持つ売上高56兆円を誇る米ウォールマートが時代を席巻するアマゾンに対して反転攻勢を強め業績をあげて

 います。日経ビジネスで特集(2020、1,20号)ウォールマートは日本のスーパーの他ホームセンター、衣料、家具、家電量販店の役割を担ってお

 り、「エブリーデイ・ロー・プライス(毎日低価格)」を実現してきたからこそ小売りの巨人になったのです。そしてアマゾンの脅威から近年はIT・EC

 への投資(全投資の68%)を拡大し業績低下の懸念を払拭したのです。

・店の店員がカートを押して棚から商品を次々とかごに入れている。これはウォールマートのEC(電子商取引)事業を牽引している「オンライン・

 グローサリー(食料雑貨)・ピックアップ(OGP)」の作業です。OGPはネットで食料品等を注文して店で受け取る、取り置きサービス。客はあら

 かじめ専用アプリ内で牛乳や野菜を選んで会計し、取りに行く店と時間帯を選択する。指定した時間に合わせ来店し、ピックアップ専用の駐車スペ

 ースに止めると従業員がトランクまで持ってきてくれる仕組みだ。ウォールマートの経営幹部は「店舗を配送とピックアップの拠点と考えれば店

 舗はデジタル体験を拡張し、我々の次の10年を守る存在だ」という。

・米国3都市で始めた「インホーム・デリバリー」サービス。顧客宅に上がり冷蔵庫に食品を置いていく先進的なサービス。高齢者の親に代わって

 子供が注文。ECで入った注文に沿って、近くの店舗で商品を集めカメラを身に付けた従業員が配達にに向かう。アマゾンが17年から始めた玄関

 の中に荷物を置いていく「キー・バイ・アマゾン」に対抗して19年から始めている。年98ドルで無制限配達を実施

・デジタルシフト成功の背景に4つの要因

  1. 人材獲得:ECサイトの運営会社を次々と買収、エンジニアを獲得 オムニチャンネル化(複数販売チャンネルを活用、実店舗とネットの境界を融解 連携し多様な販売機会を創出)という小売りの潮流の変わり目を担う
  2. 働き方の変革:人を増やさずロボットを活用 15分毎に自走式ロボットが巡回、棚の欠品情報をサーバーに送る、従業員の端末に表示され、それに従って補充等をする。
  3. アジャイル思考:従業員が知りたいことを何でもスマートフォンに向かって話しかけると答えてくれる店舗運営で必要な質問アプリ、アジャイルとはすばやいという意味
  4. トライ&エラー:ウォールマートは様々な面でトライ&エラーを繰り返している。新たな顧客向け新サービスや従業員向けツールを導入する際には「まず5店舗くらいから始め広げていく、失敗の可能性が高いものはやめる」

ウォールマートはトップの旗振りでデジタルシフトを鮮明にし実店舗とIT・EC活用で成功しつつあります。

 

 

NO73 ニッチトップ

2020年5月20日 水曜日

「ニッチの分野を攻め、そこでナンバーワンになる」

これはすべての中小企業の生きる道だと思っています。例えば旅行業界でしたら断然トップはJTB、その他の大手と言えば日本旅行、阪急交通社、

近畿ツーリスト等が多い中で、規模の小さな企業が生き残っていくにどうしたらいいのでしょうか?

それはやっぱりニッチな分野でナンバーワンになることです。1つの例がエイチ・アイ・エスです。(株)エイチ・アイ・エスは1980年に設立、

設立して5~6年目くらいで会社がぐらついた時期があったそうです。そこできちんと組織を作り会社の目標を立てみんなでその方向に進むように

したことです。組織作りと共に事業を少しずつ広げています。はじめは旅行好きを相手に一般には知られていないニッチなツアーの企画をしたそう

です。人気だったのは中国ツアーだったそうです。当時は観光で中国に入るのが難しかった時代です。でも実は香港ではビザがとれたのです。香港

までの往復航空券と香港のホテル宿泊をセットして売り出し大ヒットしたそうです。また今ほど人気の観光地でなかったバリ島に目をつけバリ島で

ナンバーワンになるよう、徹底的にプロモーションをかけ売り出し実際にナンバーワンになったそうです。その後タイなど他のアジア諸国にも広げ

ニッチを攻めてナンバーワンになっていったのです。90年代後半には大手旅行会社も安いツアーを販売してきました。エイチ・アイ・エスも影響を

受けるかと思ったそうですが大丈夫だったそうです。大手は法人・団体客には強いのですが個人旅行にはあまり得意ではなかったようです。たくさん

売れば航空券もホテルの仕入れも有利です。今や資本金110億円、年商8000億円、従業員14000人の堂々たる一部上場企業の旅行会社大手

です。澤田社長は『エイチ・アイ・エスがここまで成長できたのは、ニッチな分野でナンバーワンを目指して、前例がなくても挑戦してきたからなの

でしょう。「オンリーワン」と「ナンバーワン」が、勝つためには大切なのです』とおしゃっています。(参考:日経ビジネス2020、1,20号)

 

NO72 ダイバーシティ経営

2020年4月24日 金曜日

 「ダイバーシティ経営を実現するために必要な4つの取り組み」と題して中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)佐藤博樹教授の

寄稿記事を読み今の時期、当を得たものと思い紹介します。(出典:大阪府経営合理化協会会報NO543号2020,4,1発行)

・ダイバーシティ経営に取り組む企業が増えている。その背景には「日本人男性、フルタイム勤務、時間・転勤制約なし」といった、従来「適材」

 と考えられてきた人材の確保が質・量両面で難しくなったことがある。

・ダイバーシティ経営の基本は従来の人材活用と同じ「適材適所」に変わりはないが多様な人材というと性別、国籍といった属性の多様化を誤解する

 人が多いが、より大事なのは「多様な価値観を持つ人が働き」なおかつ「その人たちが活躍していく仕組みを整備していく」ことにある。

 具体的には次の4つが大事である

・第1は働き方改革である。多くの企業では、フルタイムで働き残業もできることが標準的な社員の働き方になっている。しかし多様な人材が

 活躍できるようにするためには、仕事と介護や子育てとの両立の課題があり従来の働き方が難しい社員などにも責任ある仕事を任せられる働

 方への改革が必要になる。このためには長時間労働を評価する職場風土の変革が必要で、時間意識の高い働き方への転換が求められる。

・第2は多様な価値観を持つ人を受け入れながら、組織としての求心力を維持することである。そのため、組織としての求心力として経営理念

 の浸透、定着が重要になる。

・第3に人事管理システムの改革である。従来は同質的な人材像を前提とした会社主導のキャリア管理がなされてきた。しかし共働きの社員が増

 えたり、仕事と子育てや介護の課題を抱えたりする社員が増えることを考えると、この点の改革が必要となる。

・第4に多様な部下をマネジメントできる管理職の育成と登用が重要になる。管理職の部下マネジメントの基本は①部下が担うべき役割を理解する

 こと(役割理解支援)②期待された役割を実現するために必要な職業能力を部下が保有できるようにすること(能力開発支援)③部下が仕事意欲

 を高い水準で持続すること(仕事意欲維持向上)である。特に管理職には部下や周りの人の意見や考えを聞き出せる「傾聴するコミュニケーション

 能力」が求められる。

 

NO71 危機感

2020年4月19日 日曜日

 日経ビジネス(雑誌2020,4,20号)に目を引く記事がありました。「賢人の警鐘」というコラムで日本を代表する経営者や賢人が交代でその時々にかなったテーマで寄稿するものです。今回は「危機感は、経営者が人為的に生み出すもの、社長が人気者なら病気だ」というサブタイトルがついています。

寄稿者はミスミグループのシニアチェアマンで前職はボストン・コンサルティンググループでコンサルタントをされていた三枝匡さんです

(著書「V字回復の経営」で有名)

・会社の「危機」と、社員の抱く「危機感」は相関しない。むしろ逆相関と言った方がいい。

 業績が悪ければ危機を感じるはずだが、低い業績の会社ほど、たるんだ雰囲気であるこ

 とが多い。逆に成長企業で業績が良くて危機には見えないのに、社員がピリピリしてい

 て、頑張り屋が多い。

・この逆相関が起きる理由は社員の反応にある。成長企業の社員は会社の外に敏感である。

 「競争相手」の動き、「顧客」の変化、世界の「技術動向」などで、競争に遅れたこと

 を察知すると、社員は「まずい」「何とかしなければ」と考える。一方、業績が低迷し

 組織が澱(よど)んでいる会社では、社員の多くが「内向き」の論理で動く。市場での

 勝ち負けや顧客の声には概して鈍感で競合の後追いで満足する。

・事業再生に成功した会社では必ず改革のリーダーが現れる。古くはNTTに乗り込んだ

 真藤恒氏、GEのジャック・ウェルチ氏、経営破綻した日本航空を2年で救った稲盛和

 夫氏など、事業再生は2年で成功宣言を出せるスピードで進めていくことが肝要だ。2

 年で変われない会社は10年たっても変われない

・経営者はよく計算された「戦略的アプローチ」と「具体的アクション」の切り込み方を

 用意し、その上でトップ自らが矢面に立つ覚悟で既成の組織と既成の価値観を突き崩し

 ていかなければ、改革の成果を引き出すことは難しい。問題の核心に切り込んでいくトッ

 プは好かれることはまれで、それがトップの宿命だ。